ブーム広がる「かき氷」介護現場でも注目…“最後の晩餐”になる日も?
盛る器はキンキンに冷やして
自宅でかき氷専門店のように仕上げるのは難しい。味の決め手は、手軽なシロップだろう。
「シロップは冷たい氷で味がしっかりわかるほど甘みが強い。かけすぎは禁物です」
甘みは体温に近い温度で強く感じ、温度が低いほど弱くなる。キンキンに冷えたかき氷で感じられる甘みとなると、かなりの糖分が含まれているのだが……。
「練乳を加えると、一気にリッチな味わいになります」
練乳の糖分も高い。シロップとともに、ほどほどにしながら、好みの味を見つけよう。
かき氷を長くしっかりと味わうには、氷を盛る器をキンキンに冷やしておくことを忘れずに。器との温度差を抑えることでふわふわ感が長持ちするという。
かき氷は夏の風物詩だが、介護現場でも注目されている。「ガリガリ君」(赤城乳業)の60ミリカップタイプは2019年、日本緩和医療学会から「最優秀緩和ケア食の維持賞」を受賞したのだ。なぜか。
この商品は、コンビニやスーパーなどで一般に買えるバータイプと異なり、小さなカップなのがミソ。終末期を迎えた人は、食欲が衰え、味も分かりにくくなる。
ところが、このガリガリ君をスプーンですくって、口に運ぶと、少しずつ溶けていく。水だとむせる人でも、これならのみ込めるのだ。しかも、冷たくてサッパリとし、しっかりした味も分かる。それが高齢者にも家族にも大きな喜びだという。
「人は、食べる、トイレで用を足すなど、普通にできていたことができなくなると、とたんに気が弱ります。こうなると、治る病も治らない。そんな中にあって、『これなら食べられる』と、終末期医療患者から喜ばれたのが、市販のカップタイプのかき氷でした。かき氷は食事そのものにはなりませんが、口から食べるという人間本来の行動ができる喜びを取り戻せる可能性を秘めています」
介護の現場でも、かき氷が役立っている。超高齢社会のいま、「最後の晩餐がかき氷だった」ということも、ありえない話ではないだろう。