ヒグマによる登山者襲撃事件が知床観光に与える多大な影響…問われる「自然との共存」の形
事故が起きたのはその2日後だったため、入山を規制できなかったのか、といった批判も出た。環境省は来月中旬まで羅臼岳の登山道を閉鎖し、北海道開発局は知床峠の駐車場への立ち入りを禁止した。
羅臼岳は7月中旬から9月中旬までが登山シーズンで、年間約6000人の登山客が訪れる。事故当日も70人ほどの登山客が山にいた。
■入山規制となれば大打撃
死亡事故は知床観光にどんな悪影響をもたらすのか。
「旅行会社が企画したツアーや個人の山登り客のキャンセルは出ているそうです。登山客は山登りが目的ですから、山に登れないとなったら、知床に来てくれません。彼らはテント泊や単価の安い宿に泊まるのでキャンプ場や民宿、日帰り温泉施設は多少影響を受けています。ただ年間50万人が訪れる知床五湖に比べたら、旅行者の数自体は少ない。今のところ観光船沈没事故の時のような大きな混乱はありません」(地元の観光業者)
知床はもともとヒグマの生息地で、自然との共存を掲げて観光客を呼び込んできた。2005年の世界自然遺産登録以降、登山者が襲撃されたのは今回が初めてだが、これまで人に出会ってもすぐに逃走しないヒグマが知床半島全体で多数確認されている。今後、行政機関を中心として再発防止策や安全対策、国立公園利用のあり方などが検討される。