秋の沖縄 タマン釣りのロマンと極意 釣り研究家・大川雅治氏が徹底解説

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エサはケチらずにたっぷり付けること

 仕掛けは〈図〉の通り(注意点は後述)で、予備は竿の数×5セットもあれば事足ります。竿は1~2本。それ以上は私でも扱いきれないので、オススメできません。エサは魚やタコ、イカの切り身、アサリ、現場で調達できるイソガニにも食いつきます。

 とにかくエサをケチらずにたっぷり付けること。アサリなら2個をしっかり針に通し、さらに4個を軽く引っ掛ける。小魚がエサをつついて散らすほどまき餌効果が高まるので、もったいないと思ってはいけません。仕掛けを投入したら少なくとも10分ごとにエサを確認し、常に新鮮なものを付け足しましょう。

 竿を置いたらドラグを緩めるか、ロープで固定。あとは待つだけです。

“その瞬間”は前触れなく突然訪れます。竿先が突き込まれ、リールからラインが一気に吐き出される。ここで慌てないこと。最初の引きは強烈なので、竿全体で相手の勢いをいなしながら、指先でドラグを微調整。相手の動きがわずかに緩む瞬間まで耐えるのです。

 1、2分こらえると、ラインがフッと緩む時が来ます。そのタイミングで徐々にドラグを締め、一気に攻めに転じましょう。しかし、簡単には寄ってこないので、再び走り出したらドラグを緩めて逃がし、また落ち着いたところで巻き取る。こうした駆け引きを繰り返すのが、キャッチへの近道です。

 途中でバラしてしまっても、ガッカリしてはいけません。タマンは群れで回遊するので、同じポイントにすぐ仕掛けを投げ込めば、また次のチャンスが巡ってきます。

■絶対に守ってほしい注意事項4つ

 ここまでがタマン釣りの流れですが、絶対に守ってほしい注意事項もあります。

 前述した通り、竿を置いたら必ずドラグを緩めるか、ロープで固定するのが1つ。そうしないと掛かった瞬間、竿を海に持っていかれてしまいます。私は伊豆諸島の神津島でタマン釣りのガイドをした経験があり、どんなに事前に注意しても10人に1人か2人はロストしていました。

 そう聞くと、ラインの強度を高めたいと思うかもしれませんが、必要以上にリーダーや捨て糸を太くするのは厳禁です。沖縄には大型のサメや30キロ超の巨大エイなど、本州では出合えないバケモノがゴロゴロいます。強いラインでそいつらが掛かると、ラインを大きくロスしたり、海に引きずり込まれたりする危険性もあります。これが2つ目の注意点です。

 3つ目は、オモリの捨て糸を用意すること。タマンが暴れると、オモリがサンゴに引っ掛かることがあるのです。

 第4は、夜釣りの標準装備に加えて必須アイテムについて。スコール対策の雨具と針外し用のプライヤーもマストです。沖縄には、猛毒の針を持つダルマオコゼや巨大なウツボも生息していますから。見た目がおいしそうでも毒を持つ魚も珍しくないので、図鑑も携帯しましょう。シガテラ毒が蓄積している場合もあり、本州で食べ慣れた魚でも油断は禁物です。

 タマンは回遊魚のため運要素も大きいのが実情ですが、それでも釣り甲斐のある外道もたくさんいます。本懐を果たせなくても、晩秋の沖縄は忘れがたい釣行体験になるはずです。これらを守れば初心者でも十分釣れる可能性がありますから、ぜひチャレンジしてみてください。

 実は、私もタマンのロマンに取りつかれたひとり。近年は海水温の上昇で伊豆半島でも釣果の報告がチラホラ上がっています。ひょっとすると、三浦半島の城ケ島あたりまで北上しているかもしれない。現在、調査を進めています。私の釣果はインスタグラム(@masaharuokawa)でも紹介しているので、ぜひチェックしてみてください。

▽大川雅治(おおかわ・まさはる) 全国津々浦々、渓流から深海まであらゆる魚種を対象に釣行を重ねる「釣り研究家」。釣り歴は50年超。グローブライド株式会社(旧・ダイワ精工)を退職後、現在は釣りの企画運営やテレビ番組などの監修を手掛けている。

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