著者のコラム一覧
大竹聡ライター

1963年、東京都生まれ。早稲田大学第二文学部卒業後、出版社、広告代理店、編集プロダクションなどを経てフリーに。2002年には仲間と共にミニコミ誌「酒とつまみ」を創刊した。主な著書に「酒呑まれ」「ずぶ六の四季」「レモンサワー」「五〇年酒場へ行こう」「最高の日本酒」「多摩川飲み下り」「酒場とコロナ」など。酒、酒場にまつわるエッセイ、レポート、小説などを執筆。月刊誌「あまから手帖」にて関西のバーについてのエッセイ「クロージング・タイム」を、マネーポストWEBにて「大竹聡の昼酒御免!」を連載中。

(10)東京・銀座のハイボール

公開日: 更新日:

 店主は間口一就さん。2002年に銀座に店を出し、角瓶のハイボールと缶詰つまみで一世を風靡、ほぼ四半世紀経つ現在は、工夫したフードメニューを増強して、若い人も、私のような干からびたオヤジも、愉しませる。

「せんせーっ! いらっしゃいませ!」

 店主自らお道化てテーブルへ来てくれたので、私はひと言、

「じゃんじゃん、持ってきて!」

 と叫んでいた。ここは銀座のバーである。なに、構うもんか、オレにはオレの流儀がある。

 アジフライと、すずこ(スジコのこと)のサンドウィッチを頼み、お通しの殻付き落花生を割ってはポリポリ喰う。

 ああ、うめえ。酒はうめえなあ。

 話す内容といえば、老いた親の介護をいかにするか、ってな話。最近、これが多い。あと、私は遠慮しているけれど、ご自由に好きな話をしてごらんと言われたら、たぶん、4人の孫の話を、デレデレとするに違いない。

 なんとも、恰好がよくないが、オレの人生、カッコがついたときなんて、ほとんどなかったよなと、ふと思い、それはそれで、満足だと思う。これは自分に言い聞かせているか。いや、そうじゃない。今夜の酒もすこぶるうまい。それを改めて感じせてくれた東京・銀座のハイボールに、感謝、感謝。

【連載】大竹聡 大酒の一滴

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