著者のコラム一覧
大竹聡ライター

1963年、東京都生まれ。早稲田大学第二文学部卒業後、出版社、広告代理店、編集プロダクションなどを経てフリーに。2002年には仲間と共にミニコミ誌「酒とつまみ」を創刊した。主な著書に「酒呑まれ」「ずぶ六の四季」「レモンサワー」「五〇年酒場へ行こう」「最高の日本酒」「多摩川飲み下り」「酒場とコロナ」など。酒、酒場にまつわるエッセイ、レポート、小説などを執筆。月刊誌「あまから手帖」にて関西のバーについてのエッセイ「クロージング・タイム」を、マネーポストWEBにて「大竹聡の昼酒御免!」を連載中。

(22)ウイスキー造りの夢

公開日: 更新日:

 ウイスキーをおいしくするのは、原材料や気候といった自然の力と、丹精して造り上げる人の力、そして、静かに眠る時間なのだ。

「13年後には30年ものが飲めますよ」

 昨年、秩父蒸溜所を訪ねた私に、肥土さんは笑いながら言った。それだけで私の胸にこみあげるものがある。ここには、ウイスキーを造る人間だがけがもつ、はるかな夢がある。

 先月、神楽坂の「サンルーカルバー」で、久しぶりでイチローズモルトを飲んだ。1杯目は秩父の第1蒸溜所と、2019年に稼働を開始した第2蒸溜所の原酒をブレンドした、ダブルディスティラリーズ。まさに「ザ・秩父」と呼びたい一品だ。そして2杯目は、肥土さんの祖父が開設した羽生蒸溜所で、肥土さんの父の代に造られた原酒に、秩父の原酒、肥土さんがウイスキー造りを学ぶために訪ねたスコットランドの蒸溜所の原酒などをブレンドしたワールドブレンデッドウイスキー「20thアニバーサリー」。ベンチャーウイスキー創業20年を記念する1本には、肥土さんのウイスキー造りのエッセンスが集約されている。

 3杯目には、サントリーの「山崎」をいただいた。かつての壽屋の山崎蒸溜所で我が国初のウイスキーが滴ったのが1924年。それから84年の歳月を経て秩父蒸溜所で最初の一滴が生まれ、そこから数えて今年で18年になる。

 ウイスキー造りは、作り手の人生とともにある。それは長い時間が紡ぐ夢だ。そんなことを思いながら、黄昏時、しみじみとウイスキーを飲むのは、この上ない愉しみだ。

【連載】大竹聡 大酒の一滴

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