著者のコラム一覧
井上理津子ノンフィクションライター

1955年、奈良県生まれ。「さいごの色街 飛田」「葬送の仕事師たち」といった性や死がテーマのノンフィクションのほか、日刊ゲンダイ連載から「すごい古書店 変な図書館」も。近著に「絶滅危惧個人商店」「師弟百景」。

(3)泣き夫と最後のドライブに

公開日: 更新日:

「『臭いがしなかった』とおっしゃるご遺族は、“普通”の状態でないために気づかれなかったのでしょう。我々が、死臭を感じないご遺体はまずありませんから」

 葬儀の現場で20年以上働いてきた葬祭ディレクターの堀井久利さんはこう明かす。感受性の強い人ほど遺体を「不気味」と感じ、その印象を胸にしまい込んで「しんどい思い」をするとみる。

 納棺師の修復やメークで一時的に外見を整えることはできるが、時間の経過による変化を止めることはできない。一方、エンバーミングは衛生的に外見や臭いの変化を長時間防ぐことができるのである。

 日本でもとびきりの例が行われていた。「遺族が、故人と一緒にドライブした」というのだ。

 担当したのは、東京・大田区の「ディーサポート社」代表でエンバーマーの真保健児さん。

「ご主人の闘病中にメールが届き、やりとりをしていた方です。『夫は車が好きで、2人でドライブによく行った。病気になってから、新車に買い替えた。いざとなったら、その車に乗せてあげたい』ということでした」

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