著者のコラム一覧
井上理津子ノンフィクションライター

1955年、奈良県生まれ。「さいごの色街 飛田」「葬送の仕事師たち」といった性や死がテーマのノンフィクションのほか、日刊ゲンダイ連載から「すごい古書店 変な図書館」も。近著に「絶滅危惧個人商店」「師弟百景」。

(4)お別れの時間を大幅にコントロールできるのもメリット

公開日: 更新日:

「妻は普段お化粧をしていたので、エンバーミングは彼女がお化粧をするのと同じ。きれいな姿で送り出してあげたい。残された者の務めだと思った」(大阪府、若林俊一さん=67)

「母の死に顔は痛々しく、おばあちゃん子だった孫、ひ孫たちのショックが大きすぎると思った。『優しいおばあちゃん』と記憶にとどめさせてあげたかった」(神奈川県、木下二三代さん、仮名=70)

 若林さんは家族葬、木下さんは「1時間のお別れ会」形式を営んだが、「エンバーミングは、迷う選択ではなかった」と口を揃える。

 一方、確固たる独特の理由があったのは、吉田浩司さん(65=東京都)。息子がインド、娘がアメリカ、弟はイタリア、姪はフランス。一族が世界中に散らばる。姪に子供ができたのを機に、昨夏、パリで全員が集まる計画が前年からあった。施設に入居する97歳の父は、その頃すでに意思疎通できず、「正直いつ亡くなってもおかしくない状態」だったという。

 吉田さんはパリ行きをやめず、施設長、葬儀社に委任状を渡し、3者でLINEグループを結成。万が一の場合はエンバーミングをしておいてもらい、帰国後に葬儀を行うことを共有した。結果的に父は吉田さんのパリ滞在中に息を引き取り、予定通りエンバーミングが行われた。吉田さんの帰国後、アメリカの娘と、イタリアの弟夫婦が一時帰国できた10日後に家族葬を行った。

最新のライフ記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    「遅刻横行」「新入生は練習禁止」…かつての神村学園を変えた小田監督が語った指揮官の矜持

  2. 2

    侍ジャパンは2028年ロス五輪“出場”すら危うい現実 27年プレミア12が目先の焦点に

  3. 3

    相次ぐ海外勢欠場の幸運…日本勢は異例の“棚ボタ”メダルラッシュへ【25日開幕フィギュア世界選手権】

  4. 4

    「高市離れ」が参院自民と霞が関で急加速 11年ぶり暫定予算ドタバタ編成がダメ押しに

  5. 5

    松重豊「孤独のグルメ」続投の裏にある《諸事情》とは…63歳ゴローさんがやめられない理由

  1. 6

    前田敦子“アンダーヘア透け疑惑”写真集が絶好調! トップ張った元アイドルの生き様を女性が強く支持

  2. 7

    沖縄尚学の左腕・末吉良丞は日米争奪戦を呼ぶ「間違いなくドラ1候補」

  3. 8

    サヘル・ローズさん「憲法9条がある日本は世界に平和を訴える独自の役割がある」

  4. 9

    高市首相が画策「逃げ恥国会」は大失敗!予算年度内成立に暗雲、11年ぶりの暫定予算編成へ

  5. 10

    松重豊は福岡の人気私立「西南学院」から明大文学部に 学費の問題で日大芸術学部は断念