名水を利用したそばの街にスパイスの香り 城下町・松本でカレー店が広がった由来は?
■「インド人が納得する味を再現したものです」
日が暮れてからは地元客で賑わうカウンターメインの居酒屋へ。
「松本にはカレーを食べに来た」と何げなく口にすると、「ウチも毎年カリーラリーに参加してるよ」と大将。和食中心の居酒屋でも当たり前のようにカレーの話題が出てくることに、小山さんに聞いた話が実感に変わった。その大将に翌日食べるべきオススメの一軒も教えてもらった。
「じゃあ明日は『BABAじぃ』だね。本場のやつ、食べてみなよ」
取材は3月中旬の平日だったせいか、松本城の近くでも、住宅街の一角とあって、観光客はまばら。そんな一角に店はあった。
店主の藤田宏司さんは異色の経歴を持つ。慶大卒業後、語学を学ぶためにインドに渡り、その魅力に取りつかれた。資金を貯めては渡印する生活を約10年。現地で料理を学ぶ中で、「店を持ちたい」という思いが芽生えたという。帰国後は農業に従事しながらキッチンカー営業を経て、2022年12月に現在の店をオープンした。
そんな藤田さんのインド料理にかける熱量は底知れないものがある。ビリヤニ(スモール1200円~)は、まずライスを7~8割ほど下茹でする。鍋の底にチキンなどの肉(マサラ)を敷き、下茹でしたライスを重ねて蒸し上げる本格的なハイデラバード製法だ。肉の水分と蒸気で仕上げることで、うまみがしっかりとライスに染み込むという。
「気温や湿度によって、微妙に蒸し加減を調整しています」
カレー(2種1400円~)もまた印象的だ。ヨーグルトベースのキーマホワイトは、刺激ではなく肉のうまみで食べさせる。スパイスは前に主張し過ぎず、奥で香る。一般的なカレーのイメージとは異なる、静かな奥行きが感じられた。
「日本のインド料理は日本人向けに調整されているものが多い。しかし、おいしさも大事ですが、私は“本物”を、現地のインド人が納得する味を作りたい。ここは全品すべて本場の味を再現したものです」
毎年9月は店を閉め、1カ月かけてインド各地を巡る。現地で味を覚えて日本に持ち帰り、試行錯誤を重ねる。
「スパイスの組み合わせは無限大。もっとさまざまなインドをお届けできるよう精進していきます」
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松本城を守るために入り組んだ通りの中に、店主たちの情熱がスパイスの香りとともに溶け込んでいた。
※価格やメニューなどは取材時のもので、変わる可能性もあります。訪問される際はご注意ください。

















