シルバーウッド 下河原忠道社長<1>尊敬する父の勧めで入社
千葉県船橋市の住宅街にある「銀木犀」には午後、学校帰りの子供たちが次々にやってくる。入り口には昔懐かしいお菓子が並ぶ駄菓子屋。おばあちゃんが店番をする。一歩中に入ったロビーには、いくつものテーブルがあり、子供たちが宿題を広げたり、おばあちゃんやおじいちゃんとおしゃべりをしている。そこかしこで、にぎやかな笑い声が上がる。
銀木犀が何たるかを知らない人にとっては、「ここは一体?」と戸惑う光景かもしれない。実は銀木犀は、入居率ほぼ100%、全国でもトップクラスの人気を誇るサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)だ。入居者には認知症の人も少なくないが、「認知症とは〇〇〇」という思い込みを排除したサ高住として注目を集めている。ここをつくり出したのが、「シルバーウッド」社長の下河原忠道だ。
東京都出身の下河原は長男として生まれた。父親は鉄鋼会社を経営。超多忙で、ほとんど家にいなかった。
「だけど、一つ一つの交流を大切にしてくれた。父親から受けたのは、『自分でやる』という教育。母親も父親の仕事を手伝って家にいない時が多かったんだけど、僕たちへの愛情が強く優しい人でね。団地の11階に住んでいたんだけど、『ママとどっちが先に下に着くか勝負ね』って、母親はエレベーターで、僕は階段で下りるんです。必ず母親が負けてくれてね。うれしかったなあ。『お父さんは素晴らしい人なのよ。お父さんのおかげで、こうして暮らせるのよ』が口癖でしたね」