「レビー小体型認知症」は初期から多彩な症状が現れる
脳の中にレビー小体という異常なタンパク質の塊が蓄積することで引き起こされるレビー小体型認知症。前回、レビー小体型では、アルツハイマー型の病変も併せ持っている認知症患者さんが多いと紹介しました。
レビー小体型は「通常型(もしくは普通型)」と「純粋型」に分けられ、通常型はレビー小体型・アルツハイマー型の病変を持っている場合を指します。一方、純粋型はアルツハイマー型の病変がない場合を指します。レビー小体型の患者さんの大半が、通常型に該当します。
レビー小体型(通常型)の症状について、より詳しく説明しましょう。アミロイド型の病変も持つ、つまりアミロイドβの蓄積もあるので、アルツハイマー型の症状も見られるのですが、アルツハイマー型単体の場合とは違いがあります。
レビー小体型は、初期から症状が多彩です。物忘れも見られるものの、必ずしもそれが目立つわけではなく、むしろ別の症状の方が目立つ場合が往々にしてあります。
例えば、前回の本連載でも出てきたレム睡眠行動障害。私たちは睡眠中、深い眠りと浅い眠りを繰り返しているわけですが、浅い眠り(レム睡眠)の時に、何かを言ったり、起き上がったり、歩いてうろうろしたりします。
昼間は普通に行動し、仕事や家事を問題なくこなしているけれど、夜中、睡眠中に突然今までなかったような行動をとるようになったら、レビー小体型によるレム睡眠行動障害もひとつの可能性として考えられます。
レビー小体型は、うつ病を伴いやすい。アルツハイマー型でも、物忘れが増えることで気持ちが落ち込んでうつ状態に陥ることがありますが、レビー小体型のうつ病は長引く傾向にあります。そして、治りにくい。
抗うつ薬を処方しても症状の改善が見られない場合、電気けいれん療法を緊急避難的に行うこともあります。
電気けいれん療法は1930年代に精神疾患の治療としてヨーロッパで開発された、歴史が古い治療法です。“けいれん”という言葉から、怖い治療法のイメージを抱くかもしれません。現在は技術的に進歩し、安全で副作用の少ない方法として確立され、全身麻酔や筋弛緩薬を用いるのでけいれんも生じません。