著者のコラム一覧
重道武司経済ジャーナリスト

1957年鳥取県倉吉市生まれ。84年フジサンケイグループ傘下の経済紙「日本工業新聞」(現フジサンケイビジネスアイ)の記者となり、千葉支局を振出しに鉄鋼、自動車、総合電機、財界、金融、エネルギー(電力・石油・ガス)などの業界を担当。2000年外資系通信社に転じた後、02年からフリーに。得意分野は通信社時代を含めて在籍足掛け7年にも及んだ日銀記者クラブ時代に人脈を培った金融。自動車業界にも強い。

アルツハイマー新薬レカネマブが販売開始 高価格だけどエーザイが「それでも不満」の背景

公開日: 更新日:

 もっとも実際の患者負担ははるかに少なくて済む。「高額療養費制度」が適用されるためだ。70歳以上で年収156万~370万円の人なら「自己負担は最大年間14.4万円ほど」(厚労省幹部)とされるが、医療保険財政に与える影響は少なくない。

介護の負担分が反映されていない?

 ただそれでもエーザイ内部には「薬価への不満がくすぶっている」(関係者)らしい。米国での円換算薬価約390万円を100万円近くも下回っているうえ、認知症の進行を抑えることで軽くなる介護の負担分が価格に反映されていないからだ。

 同社ではこれらを織り込むと薬価は468万円になるとの独自の試算を公表。薬価に関する国の原案が示されると「不服意見」まで訴えた。

 とはいえレカネマブを服用したからといって、C型肝炎の特効薬「ハーボニー」のように認知症が完治するわけではない。臨床試験では投与から18カ月までしか調べておらず、その後の症状がどう進行していくかは不明だ。脳の出血やむくみといった副作用の存在も報告されている。まずは「お試し価格」といったところかもしれない。

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