著者のコラム一覧
有森隆経済ジャーナリスト

早稲田大学文学部卒。30年間全国紙で経済記者を務めた。経済・産業界での豊富な人脈を生かし、経済事件などをテーマに精力的な取材・執筆活動を続けている。著書は「企業舎弟闇の抗争」(講談社+α文庫)、「ネットバブル」「日本企業モラルハザード史」(以上、文春新書)、「住友銀行暗黒史」「日産独裁経営と権力抗争の末路」(以上、さくら舎)、「プロ経営者の時代」(千倉書房)など多数。

エルピーダメモリ(上)坂本幸雄元社長が76歳で死去…元祖“日の丸半導体”経営者の栄枯盛衰

公開日: 更新日:

 だが、サムスン電子、SKハイニックスなど韓国勢とのシェア争いに敗れた。市況悪化も重なり、12年2月、会社更生法を申請した。負債総額は4480億円に上った。

 エルピーダの倒産は、いま振り返ってみても不可解なことばかりなのだ。会社更生法を申請した12年2月時点でも、有力取引先から注文が入っており、つなぎ資金さえ調達できれば再建は可能だったはずだ。

 坂本氏は「日本政策投資銀行が100億円の融資を拒否したため会社更生法を申請した」と説明している。

 法的処理の過程で、坂本氏は「“計画倒産”を仕組んだのではないか」との悪評を浴びた。自ら管財人に就いて、米半導体大手マイクロン・テクノロジーにエルピーダメモリを売却したからである。13年7月、マイクロンによる買収が完了。エルピーダはマイクロンメモリジャパンに、実に見事に変身した。

 連鎖倒産した中小企業の経営者が自殺し、エルピーダの株券は紙くずになった。当然、株主は激怒。「経営破綻が予見できたのに、その直前に資金調達計画を発表。会社が存続するかのようにみせかけたのは不当だ」と主張し、坂本氏ら旧経営陣を相手取り1億1500万円の損害賠償請求訴訟を起こした。

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