崩壊するエレベーターの安全神話…保守コスト低下で命を預ける装置が価格競争の産物に
「あるメンテナンス会社はずさんな対応が問題視され、大手の賃貸管理会社から『出禁』を通告されたという噂がある。だけど、そんな会社でも別の案件を受注し、生き残れてしまうのが、この業界の現実だ」(同代表)
こうした状況を、供給側の問題だけで片づけることはできない。多くの分譲マンションでは、管理費の値上げを避けるため、メンテナンス会社を「費用」だけで選びがちだ。「どこの見積もりが一番安いか」という視点が先に立ち、「点検の中身」までチェックすることはほとんどない。
「管理費の値上げを住民に同意してもらえない。結果として、たたけるところはたたいて帳尻を合わせていく。ある意味で一番、落としやすいのがエレベーター保守費用だったりする。しかし、費用と安全はトレードオフと知るべきだろう」(不動産コンサルタント)
全国には90万台ものエレベーターがあるという。交換の目安は20~25年とされるが、1台あたり1000万円を超える費用や長期停止への懸念から、改修は先送りにされがちだ。その分、老朽化したエレベーターでは日々のメンテナンスの重要性が一層増していることは言うまでもない。