石破自民が参院選公約にブチ上げ「2030年度に賃金100万円増」にチラつく“看板倒れ”の影
年金生活者は置き去り
その意味するところは何か。「23年度の平均年収420万円を前提として、今から5年かけて賃金が実質1%、名目3%程度まで上がっていくと30年度には平均年収520万円に達し、結果的に100万円増になる」(自民党関係者)という。
昨年の名目賃金は前年比2.9%増と33年ぶりの高い伸びを見せたが、実質賃金は0.2%減で3年連続のマイナス。物価上昇に賃金の伸びが追いつく兆しがあればまだしも、足元の実質賃金(4月)は前年同月比1.8%減。4カ月連続マイナスだ。経済評論家の斎藤満氏が言う。
「企業にとって最大のコストは人件費です。政治主導で賃上げを促すほど企業はそれに見合う価格転嫁を行い、結果的に物価も上がります。所定内給与は今年に入ってから平均2.4%程度上がっているが、昨年12月から実質的なインフレ率は4%を超えており、実質的にプラスにならない。この悪循環を止めるために、まずはインフレ抑制が筋。賃上げ最優先では、勤労者ではない年金生活者や自営業者などは、ただただインフレの犠牲になってしまいます」
実現できるかも分からないうえ、政策的にも筋が悪い「賃金100万円増」には実は、元ネタがある。岸田前首相が本部長を務める自民党の「新しい資本主義実行本部」の提言書だ。
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岸田前首相は先月26日、石破首相に提言書を提出した後、記者団に「賃上げを実質1%、名目3%引き上げることで、2030年度までに日本の賃金を平均100万円引き上げるという内容の提言だ」と強調。自身のXでも〈2030年度までに日本の平均賃金が100万円増加するなど、成長型経済の実現に向けた内容です〉とアピールしていた。
岸田前首相といえば、首相時代に看板政策として掲げた「令和版所得倍増」をいつの間にか「資産所得倍増」に掛け替え、議論を呼んだもの。石破自民の公約も「看板に偽りあり」のそしりは免れない。
石破首相が9日発表した自民党の公約。物価高対策が目玉のはずが、15年後の未来予想図がまさかの「1番目の公約」とは、国民もガックリだ。関連記事【もっと読む】自民参院選“目玉公約”のお笑い…15年後「名目GDP1000兆円」「平均所得1.5倍増」の寒すぎる空念仏…で詳報している。