進まぬ日米関税交渉で日本が迫られる「悪魔のディール」…防衛費大幅増が膠着打開の取引材料に?
進展の見えない関税交渉に加え、心配なのがトランプ政権からの防衛費大幅増の圧力だ。
北大西洋条約機構(NATO)加盟国は防衛負担を求めるトランプの要求をのんで、防衛費をGDP比5%に引き上げる新たな目標で合意。トランプ大統領が日本にも同水準の引き上げを迫る中、石破首相は7月1日で調整していた外務・防衛担当閣僚による安全保障協議委員会(2プラス2)の開催を見送った。
参院選前に防衛費増を争点化したくないホンネが透ける一方、国会閉会後の23日の総理会見で石破首相は「金額ありきでは決してない」としつつ、「必要なものをきちんと積み上げていくことが重要」と増額の可能性を否定しなかった。
五里霧中の関税交渉に防衛費の引き上げ要求──。トランプ大統領は「軍事は別途話し合うテーマだ」として関税交渉とは切り離す意向を示しているが、「ちゃぶ台返し」が常套手段。アテにはできない。
元外交官で平和外交研究所代表の美根慶樹氏が言う。
「中国やロシアと日本の関係、日米同盟を考えた場合、米国からの防衛費増の要求を簡単にのむわけにもいかないし、かといって無視することもできない。では、何がディールの材料として考えられるか。トランプ大統領が重視するのは、米側の負担軽減。これを抜きに交渉は成り立たない。いくら通商と防衛を切り離すという前提でも、米側の負担軽減を念頭に交渉のパッケージを考えた場合、その2つは現実的に絡んでくる。日本側が将来の防衛費を積み上げる姿勢を見せつつ、関税という目先の実を取りにいくことも交渉手段としてあり得ると考えています」
2022年、岸田政権が当時の米バイデン政権に「説得」され、防衛費を23年から5年間で総額43兆円まで増やすことを決めたばかり。通商と防衛を天秤にかける「悪夢のディール」だけは願い下げだ。
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