対米80兆円投資「言いなり文書」作成…関税合意“口約束”の大き過ぎるツケ、ますます深まる従属姿勢
「任務完了」どころか、ここからが正念場
赤沢大臣が親しみを込めて「ラトちゃん」と呼ぶラトニック商務長官は言いたい放題だ。対米投資80兆円に関して、25日の米FOXニュースで「トランプ大統領の手中にあり、自由に投資できる」と従来の主張を繰り返し、「今週後半に日本との合意について発表する」と宣言。一方、赤沢大臣はラトちゃんの発言に「承知しているが、コメントしない」と口をつぐんだ。
参院選のさなかに功を急ぎ、ロクに合意内容も詰めないままディールした結果、このザマだ。文書作成すらすっ飛ばし、肝心の相互関税も自動車関税も引き下げ実施はウヤムヤの状態で、米側の都合のいいように振り回されている。常に主導権を握られっぱなしで、何かあればガキの使いよろしくワシントンへ飛んで行く。これで「任務完了」とは冗談でも笑えない。高千穂大教授の五野井郁夫氏(国際政治学)が言う。
「結局、7月末の電撃的な『合意』とは何だったのか。詳細を詰めずに口約束を交わしたツケが今になって回ってきたと言わざるを得ません。対米投資について、トランプ大統領は『5500億ドルの契約金を受け取った』と主張し、投資から得られる利益の9割を取るつもりですが、日本政府は『あくまで出資・融資などの上限額』と説明しています。互いに大きな齟齬がある中、米国の要望に沿って文書を作る流れでは、米側に有利で日本にとっては厳しい条件を突き付けられる可能性がある。最悪、決裂だってあり得ます。難易度の高い交渉になること必至で、『任務完了』どころか、ここからが正念場でしょう」
懸念されるのが、相互関税の特例措置の実施や自動車関税の引き下げが明文化されるのかどうかだ。対米投資に関する文書作成だけが先行しては、日本の要求はいつまでも口約束の域を出ない。
「7月の時点で、米側が関税引き下げをきちんと履行することを条件に合意文書を作っておけば、こんな不安定要素はなかったはずです。文書がなくて大丈夫なのかと指摘されてきた通りの展開で、不安定な状況をつくってしまった石破外交の失敗です」(五野井郁夫氏)
「(私は)格下も格下」──。トランプ相手に、こうへりくだった赤沢大臣が交渉役では、対米従属も深まるばかりだ。
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