強肩の西武・森こそ「使って育てろ」 捕手“神格化”に疑問の声

公開日: 更新日:

野村克也と森祇晶で変わった

 評論家の高橋善正氏がこう言う。

「言っちゃ悪いが、昔は捕手のリードがクローズアップされることはほとんどなかった。当時は私もそうでしたが、投手が配球やコンビネーションを考えた上で投げていました。捕手はボールを後ろにそらさず、肩が強ければよかった。捕手出身の野村克也さん、森祇晶さんがそれぞれヤクルト西武を率いて優勝を重ねるようになってから、『捕手が大事』だと言い出した。捕手がやたらと神格化されるようになったのはそれからです」

 もちろん、捕手のリードがまったく試合に影響しないことはない。ベテラン捕手が若手投手の長所をリードで引き出すこともある。だが、先発が好投して「捕手のリードも良かった」と添え物的に言われることはあっても、投手がKOされた試合で「捕手の責任」と批判されることはまずない。バッテリーは良くも悪くも投手次第なのだ。前出の高橋氏が言う。

「捕手が神格化されすぎると投手のレベルも下がる。捕手の言いなりで投げていると自分で配球を組み立てなくなるからです。さらに打者の後ろにいる捕手には分からないが、投手は相手の目を見ることができる。何度も対戦していると、バットを振る気配などを感じる時が多々あります。捕手任せだとそれにも気付けない、いや、気付こうともしなくなる。そもそも、リードが評価された古田や谷繁だって、当初は肩が強いから抜擢された。逆に『肩は弱いけどリードが良い』という捕手は試合に出られませんよ」

 とすれば、西武の高卒2年目、森友哉もどんどん試合で使うべきではないか。類いまれな打撃力があるのに「リードが下手」「頭が悪い」などと言われ、伸び盛りの19歳なのにマスクをかぶらせてもらえず、DHでの起用が続いている。実は捕手として二塁送球タイムが1・86秒と、正捕手の炭谷を上回る強肩なのにである。

「肩が強いならなおさら試合で使うべきですよ。リードが下手でも、バントのケースなど守備のサインを出せればそれでいい。そもそも、巨人の阿部だって散々リードが悪いと言われながら、優勝した途端に『日本一の捕手』と評価された。そんなものです。使わなければ経験は積めませんから」(高橋氏)

 だいたい、配球やリードは結果論で正解などない。そんなものに振り回されて、朝令暮改のコンバート撤回をやった巨人の原監督はいま一度、「野球は投手」と自分に言い聞かせた方がいい。

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1
    大谷騒動は「ウソつき水原一平におんぶに抱っこ」の自業自得…単なる元通訳の不祥事では済まされない

    大谷騒動は「ウソつき水原一平におんぶに抱っこ」の自業自得…単なる元通訳の不祥事では済まされない

  2. 2
    狙われた大谷の金銭感覚…「カネは両親が管理」「溜まっていく一方」だった無頓着ぶり

    狙われた大谷の金銭感覚…「カネは両親が管理」「溜まっていく一方」だった無頓着ぶり

  3. 3
    米国での評価は急転直下…「ユニコーン」から一夜にして「ピート・ローズ」になった背景

    米国での評価は急転直下…「ユニコーン」から一夜にして「ピート・ローズ」になった背景

  4. 4
    中学校勤務の女性支援員がオキニ生徒と“不適切な車内プレー”…自ら学校長に申告の仰天ア然

    中学校勤務の女性支援員がオキニ生徒と“不適切な車内プレー”…自ら学校長に申告の仰天ア然

  5. 5
    初場所は照ノ富士、3月場所は尊富士 勢い増す伊勢ケ浜部屋勢を支える「地盤」と「稽古」

    初場所は照ノ富士、3月場所は尊富士 勢い増す伊勢ケ浜部屋勢を支える「地盤」と「稽古」

  1. 6
    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  2. 7
    水原一平元通訳は稀代の「人たらし」だが…恩知らずで非情な一面も

    水原一平元通訳は稀代の「人たらし」だが…恩知らずで非情な一面も

  3. 8
    「チーム大谷」は機能不全だった…米メディア指摘「仰天すべき無能さ」がド正論すぎるワケ

    「チーム大谷」は機能不全だった…米メディア指摘「仰天すべき無能さ」がド正論すぎるワケ

  4. 9
    「ただの通訳」水原一平氏がたった3年で約7億円も借金してまでバクチできたワケ

    「ただの通訳」水原一平氏がたった3年で約7億円も借金してまでバクチできたワケ

  5. 10
    大谷翔平は“女子アナ妻”にしておけば…イチローや松坂大輔の“理にかなった結婚”

    大谷翔平は“女子アナ妻”にしておけば…イチローや松坂大輔の“理にかなった結婚”