長嶋さん 腰をグッグッグッ、インパクトはパンパンパーン
私が広島の一軍打撃コーチになったばかりの1984年。当時、巨人のユニホームを脱ぎ、浪人時代だった長嶋茂雄さんが、一日コーチとしてカープの日南キャンプへやってきた。広島の古葉竹識監督との関係で実現したものだった。
カシミヤのセーターを着こなした長嶋さんは、1番に定着していた高橋慶彦や外野のレギュラーを確保したばかりの長嶋清幸に直接指導。まずは慶彦のフリー打撃を数分間見て、こうアドバイスした。
「高橋君ね、腰を『グッ』『グッ』『グッ』と切るんだ」
きょとんとしていた慶彦が打撃練習を再開すると、目が覚めるような強い打球に変わっていた。
「そうそうそう、それグーよー」
今度は長嶋清にこう言った。
「長嶋君ね、インパクトは『パーン』じゃなくて『パン』『パン』『パーン』よ」