未経験なのに…突然の二塁起用に「はい」としか言えず
すると、野村監督はイニング交代の時、「そのままセカンドに入れ」です。アマチュア時代に三塁や遊撃の経験はありますが、二塁はやったことがない。それでも「僕でいいんですか?」なんて聞けません。野村監督には威厳というか、何か迫力のあるオーラのようなものがあり、「はい」と返事をするしかない。その日のことはあまり記憶にありませんが、二塁手として打球を処理し、アウトにしたような覚えはあります。
その翌日から、シーズン最後までずっと二塁手。コンバートというよりも、何でかわからないけどやらされた、という感じですね。それでも見よう見まね、先輩に聞く、他球団の二塁手の動きを真似する……など工夫して何とか乗り切った。捕手をやっていたので、多少は内野の動きがわかっていたのもあると思います。
ただ、最後まで野村監督の意図を聞けずじまいだったのが、後悔と言えば後悔です。当時は二塁の控えの選手もベンチにいましたから。僕も含めて、監督以外は「なんで飯田を?」と不思議に思ったはず。翌91年には中堅に再コンバートされますが、最初の二塁がなければ、僕の野球人生はどうなっていたのか……。
「なんであの時、僕にそのまま二塁を守らせたんですか?」
ずっと聞きたくて、それでも聞けずじまいになってしまった言葉です。