白井貴子さん モントリオール金から30年、難民支援を継続

公開日: 更新日:

山田重雄監督から毎日のように電話攻勢

 引退を決意したものの、そこから山田(重雄)監督の熱烈な「ラブコール」が始まったのだ。

「(モントリオールの)決勝戦が終わった日、山田監督に呼ばれて、『これからどうする?』って聞かれました。引退させていただきますと言ったら、『もう少し続けてもらえないか』って言われましたが、もう体も心も限界ですと言ってお断りしたのです。それで郷里の岡山に帰ったら山田監督から電話攻勢です、『来年(77年)日本でワールドカップがあるから戻ってこい』って毎日のように。そのうち、ミュンヘン五輪金メダルの男子監督だった松平(康隆)さんも電話をかけてくるようになった。私はその気はなかったのですが、居候していたところのおばさん、先輩のお姉さんですね、『モントリオールで金メダル取れたのは日本人がみんな応援してくれたおかげだから、そのお返しと思ってもう一度頑張ってみたら』という。それで現役に戻ったのです。

 W杯は中国のエースが故障したこともあって優勝できました。今度こそやめさせてもらえる。そう思ったら山田監督は80年にモスクワ五輪があるのでやめさせてくれない。もう、すったもんだですよ。『私がセンターかライトで補助に回るなら続けてもいいけど、それじゃ勝てませんよね。金メダルは無理だと思います』って。おこがましいけどそう言いました。山田監督は『いや、白井がやってる限り国民は金メダルを望むからそうはいかない』という。『じゃあ、引退します』と。これが山田先生との最後の会話です。結局、モスクワ五輪はボイコットになった。28歳まできつい練習をやって、オリンピックに出られなかったら悔しいですよ。みんなから、先見の明があるって言われましたね」

 モントリオールの2年後に3度目の現役引退。その白井に声をかけてきた企業がある。

 80年に売上高が業界初の1兆円を超えるスーパーのダイエーと、スポーツ振興に積極的で堤義明氏が実質的なオーナーだった国土計画だ。

■体がボロボロでしたし子供もできて…

「ダイエーは山田監督とセットという条件でしたね。すごい金額を提示されてびっくりしました。国土計画からのお誘いもお断りしました。もう体がボロボロでしたし、子供もできましたから。金メダルを獲得して、何か変わったことがありますかと聞かれますが、とくになかったですね。例えば、シドニー五輪の女子マラソンで金メダルを取った高橋尚子さんが街を歩いていてもわからない人はいるでしょう。でも、私はでかい。

 80年代に『ビートたけしのスポーツ大将』に出ていた頃、たけしさんから、『80歳になってもその身長?』とか『水泳でヨーイドンって言ったら、向こうに手がつくでしょ』とからかわれていました。170センチぐらいで小柄なエースが五輪で活躍して金メダルなら、みんな『すごい』となる。日本人は比較的背の小さい民族だから、大きい人を見たら、『勝って当たり前だよね』と思うのでしょうね。大相撲炎鵬だって、あんなに人気があるのは顔も五月人形みたいにかわいいけど、背が小さい(167センチ)ことが大きいでしょ。一緒にお酒を飲んだことがあるのですが、いつもニコニコしていてね。うちの娘(168センチ)より小さいんだから」

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ドジャース佐々木朗希に向けられる“疑いの目”…逃げ癖ついたロッテ時代はチーム内で信頼されず

  2. 2

    ドジャース佐々木朗希の離脱は「オオカミ少年」の自業自得…ロッテ時代から繰り返した悪癖のツケ

  3. 3

    注目集まる「キャスター」後の永野芽郁の俳優人生…テレビ局が起用しづらい「業界内の暗黙ルール」とは

  4. 4

    柳田悠岐の戦線復帰に球団内外で「微妙な温度差」…ソフトBは決して歓迎ムードだけじゃない

  5. 5

    女子学院から東大文Ⅲに進んだ膳場貴子が“進振り”で医学部を目指したナゾ

  1. 6

    大阪万博“唯一の目玉”水上ショーもはや再開不能…レジオネラ菌が指針値の20倍から約50倍に!

  2. 7

    ローラの「田植え」素足だけでないもう1つのトバッチリ…“パソナ案件”ジローラモと同列扱いに

  3. 8

    ヤクルト高津監督「途中休養Xデー」が話題だが…球団関係者から聞こえる「意外な展望」

  4. 9

    “貧弱”佐々木朗希は今季絶望まである…右肩痛は原因不明でお手上げ、引退に追い込まれるケースも

  5. 10

    備蓄米報道でも連日登場…スーパー「アキダイ」はなぜテレビ局から重宝される?