著者のコラム一覧
鈴村裕輔野球文化学会会長・名城大教授

1976年、東京都出身。法政大学博士(学術)。名城大学外国学部教授。主な専門は政治史、比較思想。野球史研究家として日米の野球の研究にも従事しており、主著に「MLBが付けた日本人選手の値段」(講談社)がある。スポーツを取り巻く様々な出来事を社会、文化、政治などの多角的な視点から分析している。アメリカ野球学会会員。

岸信介は米国で始球式 未完に終わった安倍首相の祖父超え

公開日: 更新日:

 安倍晋三内閣が終わりを迎える。

 通算で約8年8カ月にわたって首相を務めたことは、政策の内容や政権運営の適切さの是非を問わず、日本の憲政史上最長となる記録として長く人々の記憶にとどまることだろう。

 また、第2次政権の発足以降は「理屈は後から貨車でやって来る」という政界の格言を実践するかのように衆議院の解散総選挙を重ね、衆参合わせて6回の国政選挙に勝利することで権力の基盤を強化し続けた。しかも、今回の辞任の表明によって支持率を上げるのだから、強運さも持ちあわせていることになる。

 だが、惜しまれつつ退陣するかのようにみえる「歴代最長不倒記録を作った首相」も果たせなかったことがある。大リーグ公式戦での始球式だ。「たかが始球式じゃないか」という声が聞こえるようだが、首相に復帰して以来の安倍の足跡を振り返ると大事な一点を欠いていることが分かる。

 安倍が祖父である岸信介を尊敬し、首相としてのあり方を模倣していることは周知の通りだ。安全保障を中心とした日米関係の重視や憲法改正の提唱による求心力の維持だけでなく、「首相の進退は一人で判断するもの」という点まで含めて、両者の姿は多くの場面で重なる。

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