武田薫
著者のコラム一覧
武田薫スポーツライター

1950年、宮城県仙台市出身。74年に報知新聞社に入社し、野球、陸上、テニスを担当、85年からフリー。著書に「オリンピック全大会」「サーブ&ボレーはなぜ消えたのか」「マラソンと日本人」など。

全仏の大坂なおみは初戦がカギ 逆風に強く底力を発揮する

公開日: 更新日:

 テニスのグランドスラム第2弾、全仏オープンが30日に開幕する。

 昨年は新型コロナウイルスで秋の冷たい雨に泣かされた。今年も1週間ずれたが気象条件は良さそうだ。開催には幾つか制限があり、6面のショーコートでの動員は定員の35%、最高1000人まで。夜間外出制限に沿ってナイトセッションは4回戦まで無観客だ。

■ナダルは万全

 男子はジョコビッチ、ナダル、フェデラーの3強が1年半ぶりに一堂に会す。このところ全仏をスキップしてきたフェデラーが、ウィンブルドンに備えてエントリーしてきた。

 引退が秒読みに入っているだけにファン必見だがナダルが万全だ。14度目のタイトルに照準を合わせ、前哨戦の2大会で優勝。ローマでは決勝でジョコビッチをフルセットで倒し、チチパス、ズベレフら若手も退け、不動の大本命。勝てばグランドスラム通算優勝回数21の単独トップだ。

 錦織圭はこれまでベスト8に3度。クレーも苦手ではなく、前哨戦3大会で内容の濃いプレーを見せた。復帰途上だけに多くは望まず、1試合でも多く勝ち大舞台の感触を取り戻したいところ。

 女子は目下ナンバーワンのバーティより、昨年、彗星のごとく優勝したポーランドの19歳、シフォンテクがいい。ローマの決勝ではプリスコバ妹を6-0、6-0で破ってのろしを上げた。それでも安定感でピカ一のハレプの欠場で戦国模様。大坂なおみにも十分なチャンスがある。

 これまでハードコートの全米、全豪で2度ずつ優勝。“ハードの女王”と呼ばれるがクレーコートも悪くはない。全仏は4度出場し、3回戦進出が3度(昨年は欠場)。順応性がありクレー特有のスライドもできる。問題は大会の波に乗るかどうかの一点だろう。

 全仏のクレーコートはボールが高く弾む。気持ちさえ集中すれば、あの叩きつけるパワーに対抗できる選手はいまのところいない。

 過去4度のグランドスラム制覇は、いずれも逆風に打ち勝った。最初の全米はセレナ旋風だったし、続く全豪は恩人コーチ、サーシャ・バインとの確執を隠しながらの頂点。昨年の全米では黒人差別への抗議マスクをかけながら勝ち上がり、今年の全豪はコロナの隔離生活を乗り越えてのもの。

■「会見拒否」発言は特に過激ではない

 今回も、大会期間中の会見を拒否するという声明を出した。これはオリンピックについての質問が殺到するのを見越してのこと。ローマ大会前の会見で「人々を危険にさらし、不愉快にしているのであれば、しっかりと議論されるべきと思う」と発言。特に過激な発言でもないが、大坂が言っただけで、テニスなど知りそうもない人まで引用するほど世界中に広まった。それほどの影響力があるということだ。

 24日、米国務省が日本への渡航中止勧告を出した。五輪派遣と直接の関係はなくても、これから議論が深まるにつれ大坂の発言はまな板に上がる――こういう難局に強く底力を発揮するのが大坂なおみ。大事な初戦の戦いに注目したい。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1
    日本球界今オフを襲うポスティング地獄…“予備軍”もゴロゴロ、空洞化ますます加速

    日本球界今オフを襲うポスティング地獄…“予備軍”もゴロゴロ、空洞化ますます加速

  2. 2
    佐々木朗希とのただならぬ関係…陰で糸引く「黒幕」は大船渡高時代の韓国遠征まで追いかけた

    佐々木朗希とのただならぬ関係…陰で糸引く「黒幕」は大船渡高時代の韓国遠征まで追いかけた

  3. 3
    ついに国民年金65歳まで納付案が…政府がヒタ隠す「年金積立金250兆円」という都合の悪い真実

    ついに国民年金65歳まで納付案が…政府がヒタ隠す「年金積立金250兆円」という都合の悪い真実

  4. 4
    キムタクを縛り続ける《公称176cm》のデータ…「Believe」番宣行脚でも視聴者の関心は共演者との身長比較

    キムタクを縛り続ける《公称176cm》のデータ…「Believe」番宣行脚でも視聴者の関心は共演者との身長比較

  5. 5
    裏金自民に大逆風! 衆院3補選の「天王山」島根1区で岸田首相の“サクラ”動員演説は大失敗

    裏金自民に大逆風! 衆院3補選の「天王山」島根1区で岸田首相の“サクラ”動員演説は大失敗

  1. 6
    「白鵬の弟子」押し付け合い勃発! あちこちから聞こえる師匠譲りの不穏な評判

    「白鵬の弟子」押し付け合い勃発! あちこちから聞こえる師匠譲りの不穏な評判

  2. 7
    キムタクと9年近く交際も破局…通称“かおりん”を直撃すると

    キムタクと9年近く交際も破局…通称“かおりん”を直撃すると

  3. 8
    キムタク主演ドラマがまさかの1ケタ…“考察”慣れしすぎて王道スポ根が楽しめない?

    キムタク主演ドラマがまさかの1ケタ…“考察”慣れしすぎて王道スポ根が楽しめない?

  4. 9
    全国紙が全国紙でなくなる?「新聞販売店」倒産急増の背景…発行部数の激減、人手不足も一因に

    全国紙が全国紙でなくなる?「新聞販売店」倒産急増の背景…発行部数の激減、人手不足も一因に

  5. 10
    大谷は徹底した個人主義、思考回路も米国人…ゴジラ松井とはメンタリティーに決定的差異

    大谷は徹底した個人主義、思考回路も米国人…ゴジラ松井とはメンタリティーに決定的差異