“尾身の反乱”腰砕けの完全降伏 五輪1万人案が招く感染爆発

公開日: 更新日:

「今の状況でやるというのは普通はない」――と、五輪開催に突っ走る菅政権を牽制していた、政府のコロナ対策分科会の尾身茂会長の“反乱”は結局、鎮圧されてしまったようだ。16日の分科会後に会見が行われ、どんな言葉が出てくるのか注目が集まったが、見せどころはゼロ。「やってる感」と「今さら感」が漂う会見に終わった。

  ◇  ◇  ◇

「ウィーシュ」

 会見開始の直前、こう小さく気合を入れた尾身会長。分科会が政府に提言した「科学とICTを用いた対策」の説明から始めたが、肝心の中身は、感染状況を把握するための下水調査など、どれも聞いたことのある対策ばかり。1年以上もコロナ対策の最前線にいるはずなのに、今さら「科学技術をフルに活用する時代になってきた」と熱弁を振るっていた。

 変異株の登場を踏まえ、行動変容を改めて訴えたものの、「鼻にフィットしたマスクの着用」「大声を避ける」など、こちらも目新しさは皆無だった。

 中身スカスカの「提言」をよそに、記者の質問はイベントの人数制限に集中。7、8月のイベントを「最大1万人」とする政府案を分科会が認めたからだ。

 現行の基準では、緊急事態宣言や重点措置の対象地域には「5000人または定員の50%以内の小さい方」、解除後は「5000人または50%の大きい方」を適用することになっている。ところが尾身会長は、人数を増やす「1万人案」をアッサリ了承。あれほど「(五輪を)やるなら強い覚悟でやってもらう必要がある」と菅政権にクギを刺していたのに、観客を入れて五輪を開催したい政府に“敗北”した格好だ。

 誰がどう見ても、政府案は五輪開催をにらんだ人数制限の緩和だが、尾身会長は会見で「五輪とは関係ないとの前提で了承した」の一点張り。五輪の観客数にも「1万人」を当てはめるかどうか聞かれても、「(五輪を開催した場合のリスクや対策をまとめた提言を)近日中に発表する」と繰り返すだけだった。

大会期間中の再宣言もあり得る

 しかし、このまま政権の思惑通りに観客を入れて五輪を開催したら、感染拡大は避けられない。16日に開かれた厚労省のアドバイザリーボードで、国立感染症研究所や京大などの専門家チームが示した試算は衝撃的だ。

 チームは今月20日の宣言解除、その後の人流増を想定し、9月までの都内の新規感染者数を推定。7月末から8月初旬に再発令に至るとハジき出した。インド株が猛威を振るった場合、再発令は7月初旬とも試算した。

 厄介なのは、インド株の症状が分かりづらいことだ。英国の研究によると、その症状は従来株で見られた「咳・発熱」「味覚・嗅覚の喪失」とは違い、「頭痛」「のどの痛み」「鼻水」がメインだという。季節の変わり目によくある、軽い風邪や体調不良とほとんど同じだ。

 五輪に「1万人」もの観客を入れて感染爆発なんてことになったら、尾身会長はどう責任を取るのか。

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    永野芽郁は疑惑晴れずも日曜劇場「キャスター」降板回避か…田中圭・妻の出方次第という見方も

  2. 2

    紗栄子にあって工藤静香にないものとは? 道休蓮vsKōki,「親の七光」モデルデビューが明暗分かれたワケ

  3. 3

    「高島屋」の営業利益が過去最高を更新…百貨店衰退期に“独り勝ち”が続く背景

  4. 4

    「たばこ吸ってもいいですか」…新規大会主催者・前澤友作氏に問い合わせて一喝された国内男子ツアーの時代錯誤

  5. 5

    かつて控えだった同級生は、わずか27歳でなぜPL学園監督になれたのか

  1. 6

    永野芽郁×田中圭「不倫疑惑」騒動でダメージが大きいのはどっちだ?

  2. 7

    佐々木朗希「スライダー頼み」に限界迫る…ドジャースが見込んだフォークと速球は使い物にならず

  3. 8

    第3の男?イケメン俳優が永野芽郁の"不倫記事"をリポストして物議…終わらない騒動

  4. 9

    風そよぐ三浦半島 海辺散歩で「釣る」「食べる」「買う」

  5. 10

    永野芽郁がANNで“二股不倫”騒動を謝罪も、清純派イメージ崩壊危機…蒸し返される過去の奔放すぎる行状