マスターズ覇者の松山英樹が今季2勝目&米8勝目 なのに国内メディア“地味扱い”の違和感

公開日: 更新日:

「鳥肌が立ったとまでは言わないが、これぞ世界のトッププロという最高の一打でした」

 こう言って絶賛するのはゴルフライターの吉川英三郎氏だ。

 米ツアー「ソニー・オープン・イン・ハワイ」で米ツアー通算8勝目を挙げた松山英樹(29)。本戦18番(549ヤード・パー5)のバーディーで23アンダーのR・ヘンリー(32)に追いつき、迎えたプレーオフの1ホール目だった。ピンまで277ヤードの第2打を3番ウッドでピン手前1メートルにピタリ。これを見たヘンリーは第3打をグリーン奥に外してボギーとし、松山は難なくイーグルパットを沈めて勝負を決めた。

 松山は昨年10月の「ZOZOチャンピオンシップ」に続く今季2勝目。2021-22年シーズンのフェデックスカップポイントランキングも5位から1位に浮上。4月のマスターズ連覇に向けて、このまま好調を維持したいところだが、それにしてもゴルフファンにとって解せないのは昨年の報道ではないか。

 前出の吉川氏が言う。

■二刀流・大谷の扱いに比べると…

「昨年の松山のマスターズ優勝は感慨深いものがあった。青木功が1983年のハワイアンオープンで日本人初の米ツアーVを遂げたとき、『日本人は米国本土でまだ勝っていない』と海外メディアに言われた。その後、丸山茂樹や今田竜二が本土で勝つと『日本人はメジャーではまったくダメじゃないか』と言われ悔しい思いをした。1936年に戸田藤一郎が初めてマスターズに出てから85年。松山が日本のゴルフ界の歴史を変えた。日本人のメジャー初制覇で、しかも日本人に最も人気のある大会です。メジャーリーグ大谷翔平も昨年は、野球の神様といわれるベーブ・ルース以来となる本格的な投打の二刀流で騒がれた。それもすごいことだが、松山のマスターズ優勝も大谷に劣るものではない。メディアはもっと松山のことを大々的に取り上げてくれると思ったが、想像していたほどでもなかったのは残念です」

「週刊朝日」の今年の新春合併号では、丸山茂樹がコラムの中で同じ趣旨のことを書いていた。松山のマスターズ優勝について「残念ながら、あえて言うなら日本のマスコミの報道が小さいかなあって。どんだけ大げさにしたって過大評価でも何でもないと思うんですね。ゴルフでこれ以上のことはないんで」。

松山と大谷のキャラの違い

 2人が指摘するように、松山の偉業は、大谷報道に比べれば確かに地味な扱いだった感は否めない。この点について放送関係者はこう語る。

「メジャーリーグは毎日NHK-BSで放送される。大谷は投げない日は打者として出場するし、打つか投げるか走るか、連日話題を提供してくれる。そこへいくと松山は週末だけですからね。この差は大きい。大谷は身長が190センチ以上で小顔。モデルのようなルックスで言動がとてもすがすがしく、さわやか。これまでの野球選手とは異なり、老若男女の誰からも好感が持たれるキャラです。だから民放各局のワイドショーは連日取り上げる。数字(視聴率)が取れるから。それは今年も続くでしょう」

 松山はマスターズチャンピオンになってから変わったとはいえ、それまではマスコミ対応はぶっきらぼうで、「さわやか」なイメージとは程遠い。ゴルフを知らない人でも石川遼は知っていても、松山の顔も名前も知らない高齢者や女性が多いのは現実だろう。

■メディアのスタンス

 それでも人気をはかる尺度のひとつであるスポンサーは少なくない。ダンロップ、レクサス、ロレックス、野村ホールディングスなど複数の大手企業がつき、昨年までの年収は約10億円といわれていた。マスターズ優勝直後の米経済誌「フォーブス」は、収入面で女子テニス大坂なおみの40億円(当時)を超え、日本人史上最高に到達する可能性があると報じたほどだ。

 世界的な大企業がスポンサーにつき、米メディアもその稼ぎは日本人史上最高になるかもしれないと評価している。にもかかわらず、日本ではマスターズVが大谷の二刀流ほどの「大騒ぎ」に至らなかったのは、メディアに嫌われているからなのか。

 国士舘大学非常勤講師でスポーツライターの津田俊樹氏はこう見る。

「日本のスポーツマスコミは昭和の時代から、野球をメインにやってきた。長嶋、王の人気により、プロ野球巨人を頂点に栄え、テレビの視聴率は40%前後もあった。高校の甲子園大会は今でも朝から晩までNHKで放映されている。野茂やイチロー、松井秀がメジャーに行けば日本から記者がどっと押し寄せた。近年、サッカーバスケットボール卓球など、他のスポーツでも世界で通用する選手が多数出てきたことで以前ほど野球偏重ではなくなってきたとはいえ、プロ野球やメジャーは公式戦が始まれば毎日試合がある。メディアは野球ファンを手放したくないですから」

 さらに、津田氏は続ける。

「例えば、日本ハムの新庄新監督は、まだ何もやっていないのにメディアが連日大騒ぎなのは、単に視聴者や読者の注目を集めたいからです。そんなスタンスだから、松山のマスターズ制覇だけでなく、あらゆるスポーツの成績を正当に評価できない。2月の北京五輪も同じく、テレビはメダルを取った選手のプライベート情報などに終始するのではないか」

 大谷に比べて松山の露出度の少なさが、図らずも日本のスポーツマスコミの見識を露呈しているというのだ。松山がマスターズを連覇したとき、その「偉業」はどれだけ国民に浸透するだろうか。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • ゴルフのアクセスランキング

  1. 1

    渋野日向子の今季米ツアー獲得賞金「約6933万円」の衝撃…23試合でトップ10入りたった1回

  2. 2

    女子プロ下半身醜聞“3股不倫”男性キャディーは「廃業」へ…9年の出禁処分が与える致命的ダメージ

  3. 3

    都玲華プロと“30歳差禁断愛”石井忍コーチの素性と評判…「2人の交際は有名」の証言も

  4. 4

    今の渋野日向子にはゴルフを遮断し、クラブを持たない休息が必要です

  5. 5

    米ツアーシード権喪失の渋野日向子に“原英莉花の復活ロード”「下部ツアー」参戦のススメ

  1. 6

    男性キャディーが人気女子プロ3人と壮絶不倫!文春砲炸裂で関係者は「さらなる写真流出」に戦々恐々

  2. 7

    「紅白に出たい」岩井千怜が悲願達成の条件は?「2人セットでなければ画にならない」テレビ関係者は辛辣

  3. 8

    JLPGA専務理事内定が人知れず“降格”に急転!背景に“不適切発言”疑惑と見え隠れする隠蔽体質

  4. 9

    海老原清治プロ(76)が目からウロコの提言…高齢者が続けるためには「ルールを変える必要がある」

  5. 10

    下半身醜聞・小林夢果の「剛毛すぎる強心臓」…渦中にいながら師匠譲りの強メンタルで上位浮上

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ドジャース大谷翔平32歳「今がピーク説」の不穏…来季以降は一気に下降線をたどる可能性も

  2. 2

    高市政権の物価高対策はもう“手遅れ”…日銀「12月利上げ」でも円安・インフレ抑制は望み薄

  3. 3

    元日本代表主将DF吉田麻也に来季J1復帰の長崎移籍説!出場機会確保で2026年W杯参戦の青写真

  4. 4

    NHK朝ドラ「ばけばけ」が途中から人気上昇のナゾ 暗く重く地味なストーリーなのに…

  5. 5

    京浜急行電鉄×京成電鉄 空港と都心を結ぶ鉄道会社を比較

  1. 6

    ドジャース佐々木朗希の心の瑕疵…大谷翔平が警鐘「安全に、安全にいってたら伸びるものも伸びない」

  2. 7

    【時の過ぎゆくままに】がレコ大歌唱賞に選ばれなかった沢田研二の心境

  3. 8

    「おまえもついて来い」星野監督は左手首骨折の俺を日本シリーズに同行させてくれた

  4. 9

    ドジャース首脳陣がシビアに評価する「大谷翔平の限界」…WBCから投打フル回転だと“ガス欠”確実

  5. 10

    巨人が李承燁コーチ就任を発表も…OBが「チグハグ」とクビを傾げるFA松本剛獲得の矛盾