佐々木裕介
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佐々木裕介フットボールツーリズム アドバイザー

1977年生まれ、東京都世田谷区出身。旅行事業を営みながらフリーランスライターとしてアジアのフットボールシーンを中心に執筆活動を行う。「フットボール求道人」を自称。

2年半振りに国際大会の現場に 埼玉ACL取材で“アジアの血”が巡り始めた

公開日: 更新日:

浦和戦は「クラブ史上一番のビッグマッチ」と手倉森監督

【2022年8月22日・月曜日】BGvs浦和@埼玉スタジアム2002

 月曜日開催となった試合。スタジアムへ集ったファンは1万6210人。ほとんど赤いチームの応援だったが、青いチームを目当てに来場したファンの姿もあった。

 出張でタイを何度も訪れていた父、出張についていった息子というペアの東京・昭島市在住の親子。出張時の定宿近くにあるLEOスタジアムへ何度も足を運んでいたら、BGに惚れ込んでしまったらしい。この日、着用していたユニフォームからもファン歴が長いことが感じ取れた。

■C大阪が呼応し続けるJのアジア戦略

「BGファンクラブジャパン」という横断幕を掲げる2人もいた。セレッソ大阪のサポというが、キャンプなどで訪れたことがきっかけでタイが好きになり、それからサポ仲間の有志がBGを応援していると話してくれた。

 これもJリーグが旗を振り、C大阪が呼応し続ける「アジア戦略効果」の現れのひとつといって良いだろう。

 試合開始前、浦和のリカルド・ロドリゲス監督が手倉森監督のもとへ歩み寄り、握手しながら健闘を誓い合っていた。

 J2時代にも闘いを繰り広げた2人のエモーショナルな光景からスタートした試合は開始早々から浦和のゴールが2度もVAR判定で取り消しになり、BGが運気を手繰り寄せると心躍ったが、パワーバランスの違いは歴然たるもの。二枚も三枚も上手の浦和が4-0で快勝。準決勝へと駒を進めた。

「今日の試合を財産にしていこうと選手に話してきました。クラブ史上一番のビッグマッチだったと思いますし、きっちりと負けたことで、我々は前に進んで行けると思います。試合後に浦和サポーターの前へ行って挨拶したのは、良い経験をさせてもらった我々の感謝の気持ちです」(手倉森監督)

■国内リーグで王者奪回を目指す

 今オフ、BGのフロントは、タイで2シーズン目を迎える手倉森監督のバックアップ体制をより一層整えた。今までもインフラ整備に積極的だったクラブだが、今季はJクラブでも持ち合わせないような規模のクラブハウスを新設。日本を理解するコーチや通訳といった彼を近くで支えるスタッフも充実させた。

 浦和戦後、日本で束の間のオフを楽しんでリフレッシュしたチームは25日に帰国。王座奪還へ向け、既に開幕している国内リーグを照準を合わせている。

 ここでJクラブへお勧めしたい選手を勝手に紹介するコーナーをーー。

 1人目は「チャトモンコール・トンキリ」。今大会は途中出場が多かったが、中盤の両翼から個で勝負できるアジリティーある選手だ。足元のスキルも戦術理解力もJ1でプレーするには、まだ上積みが必要ではあるものの、25歳と年齢的にも今が時期かと。獲得する価値は十分にある。

■Jのスタジアムにチャントが響いてほしい

 2人目は「イクサン・ファンディ」。兄・イルファンがプレーしていたBGへ昨季加入した。今までの起用法からも、手倉森監督はこの若きシンガポーリアンを育てたいと思っているに違いない。彼ら兄弟の父はシンガポールサッカー界のスーパースターであるファンディ・アマド。ボンボン育ちでルックスや振る舞いにもお上品さがある。

 もう1人、イルハンという弟がおり、アルビレックス新潟シンガポールでプレーしている。Jクラブの強化担当者の皆さん、シンガポールのサラブレッド達たちに投資すると数年後にはシンガポールマネーが……生臭い話になってしまうのでこの辺りで止めておこう。

 2年半振りの国際大会の現場となったACL。体の奥に眠っていた<アジアの血>が、再び巡り始めた気がしている。

 今季オフシーズンには、多くのJクラブが「東南アジアツアーを行う」と聞いている。そろそろ筆者も動き出す時が来たようだ。

 最後にひと言! チャントが響くスタジアムは最高!! Jリーグにもスピードアップした環境整備をお願いしたい。

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