世紀のトレード仕掛けた伝説のスカウト“マムシの一三”…阪神・小山正明↔大毎オリオンズ山内一弘

青木は阪神の球団代表に会うと「村山と一塁手は出さない」ことを掴み、小山については「出さない」とは言わなかった。東京の方は「一塁手の榎本喜八以外ならだれでも」ということだった。ここで小山ー山内の交換が決まったという。
この年、小山は29歳で14勝14敗。「陰り」の評価になっていた。山内は31歳で33本塁打、86打点。お堅い電鉄会社ではありえないトレード劇は、芸能界を牛耳った永田だからこその一幕だった。永田が大阪に乗り込み、正式発表したのはいわゆる“儀式”である。
下働きをした青木は大阪の名門・市岡中で内野手、関大の野球部マネジャーから阪神のスカウトに。吉田義男ら多くの主力を獲得した腕利きで、長嶋茂雄や村山を大学中退、プロ入りを仕掛けるなど伝説のスカウトマンとして球界裏面史で異彩を放っている。あだ名は人呼んで「マムシの一三」。地獄耳でもあった。