黄金の左腕、400勝投手・金田正一の獲得に成功した国鉄の尋常じゃない奇策
国鉄スワローズといえば? オールドファンなら即座にこう答えるだろう。「金田正一さ」と。そう、球界で「天文学的数字」と例えられる通算400勝を挙げた大投手である。
人呼んで、“黄金の左腕”“球界の天皇”──。
1950年に名古屋の享栄商を中退して国鉄入り。その経緯からして尋常ではなかった。県大会で投げる金田を八事グラウンドの管理人が国鉄監督の西垣徳雄に伝えた。
「どえらいピッチャーがおるでよ」
甲子園の優勝投手だった西垣の目が光った。投球を見て「100年に1人の逸材」とうなった。それから名古屋詣でを繰り返し、金田家と懇意になった。
当時は高価だった革製のスパイクを贈り、大喜びした金田は後年、「あれでまた球が速くなったで」と言った。
3年生の夏、県大会の準決勝で負けたが、快速球が話題になった。名古屋には中日ドラゴンズがいる。親会社は新聞社。横取りされるのを恐れた西垣は「金田を隠す」策を思いついた。名古屋駅近くの中華料理店の2階を借り切って金田親子をかくまったのだ。