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菅谷齊東京プロ野球記者OBクラブ会長

1943年、東京都生まれ。共同通信社でV9時代の巨人をはじめ、阪神などを担当。1970年代からメジャーリーグも取材した。野球殿堂選考代表幹事を務めたほか、三井ゴールデングラブ賞設立に尽力。現在は東京プロ野球記者OBクラブ会長。

豪傑・深見安博はシーズン中に放り出されてもパの本塁打王を手にした

公開日: 更新日:

 巨人にリチャード、ソフトバンク秋広優人。シーズン中のトレードが久しぶりに大きな話題となった。2人は将来の大砲候補と期待された選手だが、過去にはシーズン中に放り出されながら、その年に本塁打王のタイトルを獲得した剛の者がいた。

 長いプロ野球の歴史の中で唯一の記録をしるしたのは、深見安博という選手である。

 中大、社会人・西日本鉄道のスラッガーとして活躍し、1950(昭和25)年に西鉄入り。いきなり22本塁打を放ったが、2年後にまさかの通告を受けることになる。

「君、トレードだ。東急へ行ってくれ」

 52年の開幕直後、4月11日のことだった。前日まで5番を打ち、すでに2本塁打していた深見は驚いたが、移籍先の東急で23発をかっ飛ばし、計25本でパ・リーグの本塁打王を手にしたのだ。

 三原脩監督の下で西鉄の主軸を任されながら、なぜ放出されたのか。

 その頃、球界は大下弘争奪戦で大揺れだった。巨人の赤バット川上哲治と並ぶ青バットの天才が年俸などで折り合わず、前年オフに東急を出ることになっていた。ところが、肝心の大下は“雲隠れ”。各チームは、トレード交渉やら居場所を捜すやら、という異常事態だった。

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