ロッテ1年目、伊良部秀輝の悲鳴「金田監督はホンマえぐい。オレは競走馬やない…」
プロの評価も伊良部が上だった。巨人に1位指名されたボクの年俸は480万円。ロッテに1位指名された伊良部は540万円だった。正式契約の数日後、伊良部の入団を報じる新聞でそれを知ったボクは、失敗した、もう少し粘ればよかったと思った。今度はボクが伊良部の背中を追うことになったのだ。
「おい、たまらんぞ、ロッテは。来る日も来る日も、走れ、走れで走ってばかりや。オレは競走馬じゃないっちゅうねん。金田監督の顔を見るだけで息が切れるわ」
入団1年目、浦和にあるロッテの二軍球場で会った伊良部はボクの顔を見るなり、苦虫をかみつぶしたような表情でグチをこぼした。顔を合わすたびに、「オレは馬やなくて、野球選手やっちゅうの。うちの監督はホンマにえぐいわ」とブーブー言っていたものである。
その伊良部が金田さんに電話をかけたのは今季開幕直後のことだった。
「助けてください」
(この項続く=火・水・木曜公開)
▽はしもと・きよし 1969年、大阪府生まれ。PL学園3年時の87年に立浪(中日)らとともに甲子園で春夏連覇を達成。同年のドラフト1位で巨人に入団し、リリーフ投手として活躍。01年にダイエーに移籍。現在は野球評論家。