叡明(埼玉)中村監督「あくまで地元に特化したい。全国から選手を集めることは全く考えていません」
「自分が嫌だったことは生徒にはしたくない」
──一部の強豪校のように、全国から逸材を集める学校についてはどう思いますか?
「それはそれで何の批判もしませんし、僕はこんなやり方をしますという話です。そもそも、高校野球において、勝ち負けだけを教えればいいのか、というのがある。今回は甲子園に出させていただきますし、勝負事だから勝たせてあげたいですけど、その前に思春期の子供たちに野球を通じて教えるべきことがある。そして、その先にしっかりした人間形成ができて、野球の上達も足し算ではなく、掛け算になって……そういう意識の差ってあると思います」
──強豪校出身で甲子園にも出た選手が、大人になって犯罪に手を染めるケースもある。
「僕は50年ちょっとしか生きてませんけど、自分が失敗した経験なんかも生徒には伝えています。だから、あまり野球は教えないです。野球の前にやるべきことをちゃんとやらないと、野球もうまくいかない。あくまで過程が大事。だから、生徒を結果で責めたことは一回もありません」
──中村監督は浦和学院で森士前監督の下、7年間のコーチ経験がある。当時の浦学は昔ながらの軍隊式の厳しい環境でしたが、これを反面教師にしているのですか?
「いやいや、そんなことはないです。森先生から教わったことは今の生徒にも伝えています。ただ、伝え方とか、タイミングだとか、そういうものは僕なりにアレンジしてはいます。10年前と今ではまったく違うし、子供たち一人一人を見て、接しています。僕自身、昔からやらされるのが嫌、理不尽も嫌だった。自分が嫌だったことは生徒にはしたくないんです」
──甲子園に出たことで叡明の志願者が増えそうです。
「僕は地元に特化した形でという思いはあります。家から学校に通える子が『地元』の子。甲子園出場をきっかけに寮を作って、全国から選手を集めようとはまったく考えていません」