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カモシダせぶん書店員芸人

1988年、神奈川県生まれ。お笑いコンビ「デンドロビーム」(松竹芸能)のメンバー。日本推理作家協会会員。現在、都内の書店でも働く現役の書店員芸人。著書に「探偵はパシられる」など。

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「〆切は破り方が9割」カレー沢薫著

 書店員芸人という珍妙な肩書で本を紹介する仕事を始めて10年以上経つ。仕事になってしまうと、読書もしんどくなってしまうときもある。そういうときはノーストレス、いやストレス自体をぶっ壊せるほど大笑いできる書物を読みたい衝動に駆られる。こうなったら、私は必ずカレー沢薫さんの作品に触れるようにしている。

 カレー沢薫さんはマンガ家かつエッセイストで、マンガでは30代から終活を見据えて動く女性を描いた「ひとりでしにたい」がNHKでドラマ化され話題になった。エッセーも多数出しており、他者や物事に対して上からではなく「下から目線」で書かれた文章は笑いの切れ味が凄まじい。芸人を長いことやってるのでどうしても文章における笑いには厳しくなるのだが、カレー沢さんの文章は必ず下からアッパーを食らって声を出して笑ってしまう。

 本書はまずタイトルが物騒だ。社会人たるもの“〆切”、つまり納期は破ってはいけないもの。破ってしまったが最後、重い処分が下されるなんてこともあるだろう。だが「多少」破ってもなんとなく許されているのがマンガ家、文筆家商売なのだ。

 というのもこれらの職業はほかの人では代わりが利かず、かつ最終的なクオリティーを本人や業界が大事にしているからだと本書を読んで改めて思った。冒頭にこんな文言がある。

〈本書に載っている原稿の9割は催促を受けてから書き始めた受注生産品〉〈つまりこの連載は葬式開始時間になってから「今起きた」と言って原付のエンジンを温めだすような坊主を140回ぐらい指名し続けているようなものだ〉こんなにも危ない状況を堂々と書いてるのが豪胆すぎる。

 それでも連載が続いているのは当然「内容がめちゃくちゃ笑えるほど面白い」からにほかならない。〆切についての独自論や酷い扱いをしてきた編集さんの話などの著者の作家生活の話も面白いのだが、著者が多大な影響を受けたさくらももこさんについての話や、自身が発達障害であることの話、自己肯定感についての話は読んでいて大笑いしつつも胸にグッとくるものがあった。

 ちなみに私がこんなに文章で笑った作家はそれこそさくらももこさん以来である。今後の作品も楽しみにしている。 (小学館 1760円)


【連載】書店員芸人カモシダせぶんの「いい本入ってますよ!」

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