正岡子規の青春を描いた最新作が話題 伊集院静氏に聞く

公開日: 更新日:

 子規の作品を片っ端から読み漁り、より深く知っていくにつれて、彼は現代人が抱いているような悲劇的なイメージとはかけ離れた人物ではないかと、著者は感じるようになったという。

「とにかく、子規の周りには多くの人が集っていた。伊藤左千夫や高浜虚子、長塚節などのちの文学者たちが、“ノボさん”を慕っていたんです。現代では、若くして病に倒れて亡くなったことをクローズアップされていますが、悲哀ばかりが漂う人にこれほど人を引き付ける力があるはずがない。だから、私の正岡子規は、悲しいばかりの人物にはなりませんでした」

 やがて子規は大学で、生涯の友となる人物と出会う。彼の名は夏目金之助。のちの漱石である。ふたりは同じ年齢で、共に落語を楽しみ、漱石は子規から俳句を学んでいた。
「本作は、子規と漱石の友情の物語でもあります。私は、日本の近代文学はこのふたりの友情から始まったと思っています。彼らが出会い、影響を受け合い、やがて漱石は小説を書き始める。その作品には、俳句を通して子規から学んだユーモアが生かされています。ふたりは、“親友”という表現では軽いような、お互いを認め合い高め合う素晴らしい関係で、生涯でそのような相手に出会えた彼らを、うらやましくも感じます」

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    大谷翔平は米国人から嫌われている?メディアに続き選手間投票でもMVP落選の謎解き

  2. 2

    35年前の大阪花博の巨大な塔&中国庭園は廃墟同然…「鶴見緑地」を歩いて考えたレガシーのあり方

  3. 3

    高市内閣の閣僚にスキャンダル連鎖の予兆…支持率絶好調ロケットスタートも不穏な空気

  4. 4

    葵わかなが卒業した日本女子体育大付属二階堂高校の凄さ 3人も“朝ドラヒロイン”を輩出

  5. 5

    大谷翔平の来春WBC「二刀流封印」に現実味…ドジャース首脳陣が危機感募らすワールドシリーズの深刻疲労

  1. 6

    阪神の日本シリーズ敗退は藤川監督の“自滅”だった…自軍にまで「情報隠し」で選手負担激増の本末転倒

  2. 7

    隠し子の養育費をケチって訴えられたドミニカ産の大物種馬

  3. 8

    阿部巨人V逸の責任を取るのは二岡ヘッドだけか…杉内投手チーフコーチの手腕にも疑問の声

  4. 9

    高市早苗「飲みィのやりィのやりまくり…」 自伝でブチまけていた“肉食”の衝撃!

  5. 10

    維新・藤田共同代表にも「政治とカネ」問題が直撃! 公設秘書への公金2000万円還流疑惑