『「闇学」入門 』中野純氏

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■「自分が闇に溶け込んでいくような擬死体験の後の夜明けは格別です」

「夜の山歩きの魅力は、何といっても五感がフル活動することです。真っ暗な闇では、虫の歩く音から遠くの滝の音まで360度から音が聞こえてくる。風や雨の匂いもハッキリとわかり、足の裏で道を感じることが出来ます。それに自分が闇に溶け込んでいくような一種の擬死体験をした後に見る夜明けのすがすがしさは格別。一度体験したら、やめられませんね」

 昼夜問わず、明るい光の下で暮らし、「闇」とは無縁になった現代人。しかし、かつて日本人が愛してやまなかったという「闇」を、風俗、文学などさまざまな視点から考察した“闇”本である。

 著者はナイトハイク20年の達人。これまで1000以上の夜山を歩いてきた。
「ある初夏の日、高尾からの終電に乗り損ね、時間つぶしに近くの低山に登ったんです。思いのほか闇が深く後悔したんですが、目が慣れてくるとそこに広がる昼間とは別世界の、幻想的なモノクロの景色に驚きました。そして日が昇った瞬間、まるで魔法がとけるように周囲の景色がカラーになった。世界が光に征服されたかのようで、一気に魅了されましたね。しかも徹夜なのに心身共にスッキリ。闇に親しむようになって、ストレスとは無縁になりました」

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