名越康文氏(精神科医)

公開日: 更新日:

 本の中には、その考えを裏付ける豊富なエピソードが盛り込まれていて、後半では、その思想的背景を江戸時代にまでさかのぼって掘り下げています。単なるハウツー本とは違って、読む人によって理論書にもなれば、本格的なビジネスの実践書、そして何より、社会の中で仕事をするとはどういう意味なのか、を明確に教えてくれる生きた哲学書になっています。

 精神科医の立場からも、この本との出合いに感謝しています。というのも、心の問題の多くは、仕事をする中で抱えるストレスです。日本社会の構造をわかっていないと、心の問題の本質もまたわかりません。その点で僕は、経済番組で培った経験則の上に、この本から得た理論が加わり、一本のはっきりした筋道を得た思いです。

 初刊は1979年と古いですが、今読んでも1ページたりとも古くない。線をいっぱい引きながら読みました。こういう本との出合いがあるから、読書はやめられませんね。

▽名越康文(精神科医) 1960年、奈良県生まれ。相愛大学、高野山大学客員教授。近畿大学医学部卒。大阪府立精神医療センターにて、精神科救急病棟を設立。コメンテーター、映画評論などさまざまな分野で活躍中。近著に「対人関係が一瞬で楽になる心の技術」がある。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    大谷翔平は米国人から嫌われている?メディアに続き選手間投票でもMVP落選の謎解き

  2. 2

    35年前の大阪花博の巨大な塔&中国庭園は廃墟同然…「鶴見緑地」を歩いて考えたレガシーのあり方

  3. 3

    高市内閣の閣僚にスキャンダル連鎖の予兆…支持率絶好調ロケットスタートも不穏な空気

  4. 4

    葵わかなが卒業した日本女子体育大付属二階堂高校の凄さ 3人も“朝ドラヒロイン”を輩出

  5. 5

    大谷翔平の来春WBC「二刀流封印」に現実味…ドジャース首脳陣が危機感募らすワールドシリーズの深刻疲労

  1. 6

    阪神の日本シリーズ敗退は藤川監督の“自滅”だった…自軍にまで「情報隠し」で選手負担激増の本末転倒

  2. 7

    隠し子の養育費をケチって訴えられたドミニカ産の大物種馬

  3. 8

    阿部巨人V逸の責任を取るのは二岡ヘッドだけか…杉内投手チーフコーチの手腕にも疑問の声

  4. 9

    高市早苗「飲みィのやりィのやりまくり…」 自伝でブチまけていた“肉食”の衝撃!

  5. 10

    維新・藤田共同代表にも「政治とカネ」問題が直撃! 公設秘書への公金2000万円還流疑惑