「毒があるのになぜ食べられるのか」船山信次著
人間の味覚の甘味・塩味・ウマ味は体に不可欠な栄養素の、酸味・苦味は防御的に不快で避けるべきもののシグナルだという。しかし、食べ物には毒になれば薬になるものもある。そんな飲食物と毒と薬の関係を解説したテキスト。
例えば、「ギンナンは年の数以上食べるな」と言われるのは脳内の鎮静性の伝達物質の生成を抑制するギンコトキシンを含有するから。一方、健康食品の納豆は、血液の凝固を阻止する薬ワルファリンの作用を邪魔するという。そもそも人間に都合が良いのを薬、悪いのを毒と呼んでいるだけで、その線引きは難しい。生きることの基本である食べ物について改めて考えさせられる教養書。(PHP研究所 920円+税)