「終わった人」内館牧子著

公開日: 更新日:

 主人公は、63歳で定年を迎え第二の人生がスタートしたばかりの田代壮介。岩手の名門高校から東大法学部に進み国内トップのメガバンクに就職した田代は、最年少の支店長、43歳で業務開発部長と、とんとん拍子で昇進する。しかし、49歳で突然子会社へ出向を命じられ、戻るつもりで必死に働いたが、結局転籍となって社員30人の子会社の専務取締役でサラリーマン人生の幕が閉じた。

 自分を「終わった人」、定年を「生前葬」と自嘲しつつ、スポーツクラブ、カルチャーセンターと居場所を探してさまよい、職探しをしても体よく断られる始末。そんな逡巡を繰り返していたとき、思ってもみなかった話が舞い込んでくる。果たして田代の選択は……。

 サラリーマンならいつかは必ずやってくる定年をテーマに、会社人間だった男が新しい生き方を求めて試行錯誤する様子を描いた長編小説。著者初めての新聞連載小説でもあり、掲載時から定年後の男心の心憎い描写が話題を呼んだ。

(講談社 1600円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    立花孝志容疑者を"担ぎ出した"とやり玉に…中田敦彦、ホリエモン、太田光のスタンスと逃げ腰に批判殺到

  2. 2

    阪神・佐藤輝明にライバル球団は戦々恐々…甲子園でのGG初受賞にこれだけの価値

  3. 3

    FNS歌謡祭“アイドルフェス化”の是非…FRUITS ZIPPER、CANDY TUNE登場も「特別感」はナゼなくなった?

  4. 4

    阪神異例人事「和田元監督がヘッド就任」の舞台裏…藤川監督はコーチ陣に不満を募らせていた

  5. 5

    新米売れず、ささやかれる年末の米価暴落…コメ卸最大手トップが異例言及の波紋

  1. 6

    兵庫県・斎藤元彦知事らを待ち受ける検察審の壁…嫌疑不十分で不起訴も「一件落着」にはまだ早い

  2. 7

    カズレーザーは埼玉県立熊谷高校、二階堂ふみは都立八潮高校からそれぞれ同志社と慶応に進学

  3. 8

    日本の刑事裁判では被告人の尊厳が守られていない

  4. 9

    1試合で「勝利」と「セーブ」を同時達成 プロ野球でたった1度きり、永遠に破られない怪記録

  5. 10

    加速する「黒字リストラ」…早期・希望退職6年ぶり高水準、人手不足でも関係なし