「コーランには本当は何が書かれていたか?」カーラ・パワー著 秋山淑子訳

公開日: 更新日:

 子どもの頃、大学教授の父親に連れられ多くのイスラム圏に居住した経験を持つ著者は、9・11以降、イスラム過激派の言葉ばかりを流し、コーランを知ろうともしないマスメディアの風潮に疑問を覚える。そこでイスラム教の指導者である友人とともに、コーランを読み解く試みを始めた。1年の歳月をかけた対話の中で見つけたのは、女性差別やジハードとは全く異なるイスラム教の姿だった。

 本書は、無宗教者で、フェミニズムにも関心の高い著者が、厳格なコーラン解釈者の友人と時には衝突し、時には意気投合しながらイスラム教の源泉を探る刺激的な一冊。難解さゆえにイスラム教徒にすら深く読まれることが少なく、その代用としてイスラム教とは無関係な地域の慣行がイスラム教そのものと誤解されている現状を詳細に描いている。史上初めて女性に相続を認め、他宗教を尊重する寛容さを持つことなど、従来のイメージをくつがえすコーランの世界を見せてくれる。(文藝春秋 1900円+税)



【連載】週末に読みたいこの1冊

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    参政党・神谷宗幣代表の「質問主意書」がヤバすぎる! トンデモ陰謀論どっぷり7項目に政府も困惑?

  2. 2

    7代目になってもカネのうまみがない山口組

  3. 3

    福山雅治のフジ「不適切会合」出席が発覚! “男性有力出演者”疑惑浮上もスルーされ続けていたワケ

  4. 4

    松井秀喜氏タジタジ、岡本和真も困惑…長嶋茂雄さん追悼試合のウラで巨人重鎮OBが“異例の要請”

  5. 5

    文春が報じた中居正広「性暴力」の全貌…守秘義務の情報がなぜこうも都合よく漏れるのか?

  1. 6

    フジテレビ「不適切会合」出席の福山雅治が連発した下ネタとそのルーツ…引退した中居正広氏とは“同根”

  2. 7

    打者にとって藤浪晋太郎ほど嫌な投手はいない。本人はもちろん、ベンチがそう割り切れるか

  3. 8

    清原果耶は“格上げ女優”の本領発揮ならず…「初恋DOGs」で浮き彫りになったミスキャスト

  4. 9

    選管議論で総裁選前倒しでも「石破おろし」ならず? 自民党内に漂い始めた“厭戦ムード”の謎解き

  5. 10

    収束不可能な「広陵事件」の大炎上には正直、苛立ちに近い感情さえ覚えます