「空海」高村薫著

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 1200年前のカリスマ、空海の人物像を求めて歩いた思索の旅のドキュメンタリー。観光客でにぎわう高野山を出発点に、空海の原点を探して高知県室戸岬の御厨人窟へ。

 厳しい山林修行に明け暮れていた若き日の空海は、この岩窟で、未曽有の体験をする。「谷響を惜しまず、明星来影す」と自ら記した強烈な身体体験が絶対的な宗教的確信につながったのではないか。全身に明星が飛び込んでくるような体験とはどのようなものだったのか。著者は、衆生の理解を超えて曼荼羅世界に生きる密教僧、空海に思いを巡らせる。

 だが、空海の顔は一つではない。鎮護国家の担い手として朝廷に重用された空海。全国津々浦々に足跡を残した「お大師様」もまた空海。空海は2人も3人もいたかのようだ。

 カリスマ空海の没後、真言密教は空海の神格化を急いだ。高野山の奥之院で今も生きて修行を続けているという入定伝説も、全国に残る弘法大師伝説も後世のもの。空海の実像や業績はさておいて、ひたすらありがたい存在になっていく。高野山は祈りの山となり、遍路道を現代の巡礼が行く。

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