「明日この世を去るとしても、今日の花に水をあげなさい」樋野興夫著

公開日: 更新日:

 順天堂大学医学部で腫瘍学・病理学の教授を務めるかたわら、「がん哲学外来」の創始者としてがん患者と関わってきた著者が、死を意識したときに人はどう生きるべきかを説いた一冊。がんになったことで生きる意味を見失った人やうつ状態になった人の硬直した心を、温かく生き生きとしたものに変える「言葉の処方箋」が紹介されている。

 誰もが突然余命を告げられれば、少なからずショックを受ける。しかし人間いつか死ぬのは確実であり、余命は確率論に過ぎない。ならば曖昧な余命を思い煩うことはない。病気を機に人生の優先順位や自身の使命に気づき、自分のためでなく自分の外側にあるもののために生きてはどうか、と著者は提案する。

 新渡戸稲造「武士道」や内村鑑三の「後世への最大遺物」などの愛読書も紹介。良い師や良い友に必ずしも恵まれなくても、どんなときにも本からは学ぶことができると読書の効能も説く。決して特別ではない言葉が優しく心に響く。(幻冬舎 1100円+税)


【連載】ベストセラー早読み

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1
    狙われた大谷の金銭感覚…「カネは両親が管理」「溜まっていく一方」だった無頓着ぶり

    狙われた大谷の金銭感覚…「カネは両親が管理」「溜まっていく一方」だった無頓着ぶり

  2. 2
    米国での評価は急転直下…「ユニコーン」から一夜にして「ピート・ローズ」になった背景

    米国での評価は急転直下…「ユニコーン」から一夜にして「ピート・ローズ」になった背景

  3. 3
    大谷翔平は“女子アナ妻”にしておけば…イチローや松坂大輔の“理にかなった結婚”

    大谷翔平は“女子アナ妻”にしておけば…イチローや松坂大輔の“理にかなった結婚”

  4. 4
    「ただの通訳」水原一平氏がたった3年で約7億円も借金してまでバクチできたワケ

    「ただの通訳」水原一平氏がたった3年で約7億円も借金してまでバクチできたワケ

  5. 5
    水原一平元通訳は稀代の「人たらし」だが…恩知らずで非情な一面も

    水原一平元通訳は稀代の「人たらし」だが…恩知らずで非情な一面も

  1. 6
    新婚ホヤホヤ真美子夫人を直撃、米国生活の根幹揺るがす「水原夫人」の離脱

    新婚ホヤホヤ真美子夫人を直撃、米国生活の根幹揺るがす「水原夫人」の離脱

  2. 7
    違法賭博に関与なら出場停止どころか「永久追放処分」まである

    違法賭博に関与なら出場停止どころか「永久追放処分」まである

  3. 8
    大谷翔平のパブリックイメージを壊した水原一平通訳の罪…小栗旬ら芸能人との交流にも冷たい視線

    大谷翔平のパブリックイメージを壊した水原一平通訳の罪…小栗旬ら芸能人との交流にも冷たい視線

  4. 9
    小室圭さんが窮地の大谷翔平の“救世主”に? 新通訳&弁護士就任にファンが期待

    小室圭さんが窮地の大谷翔平の“救世主”に? 新通訳&弁護士就任にファンが期待

  5. 10
    「白鵬米」プロデュースめぐる告発文書を入手!暴行に土下座強要、金銭まで要求の一部始終

    「白鵬米」プロデュースめぐる告発文書を入手!暴行に土下座強要、金銭まで要求の一部始終