ストーカーがエスカレートし信頼と愛情を考えさせられる一冊

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 砂原は、近くに長期滞在し、毎日、工房に訪ねてくるようになった。そのうち、ストーカー行為がエスカレートし、脅迫状や死んだ虫などが送られてくるようになる。透は幼なじみと協力してストーカーの現場を取り押さえようとする。

 ストーカーには、〈有名人を自分の運命の人と思い込む〉タイプと〈元交際相手などが変貌したタイプ〉がある。透に見えないように悪質な嫌がらせをするのは後者のタイプだ。砂原と別に第二のストーカーがいるのだろうか?

 ミステリー小説のようで手に汗を握る展開を楽しむことが出来る。読み終わった後、人間の信頼や愛情について深く考えさせられる。

「ウォーク・イン・クローゼット」は、28歳のOL早紀の周辺で起きる出来事を服に焦点をあてて描いた小説だ。早紀は男をつかまえる武器として服を選んでいるつもりだったが、無自覚なうちに服によって支配されるようになってしまう。物と人の間で生じた悪から早紀が抜け出していく過程が見事に描かれている。★★★(選者・佐藤優)

(2015年11月26日脱稿)

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