「大村智 2億人を病魔から守った化学者」馬場錬成著

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 今年、ノーベル生理学・医学賞を受賞した大村智の伝記だが、発行されたのは4年前。受賞前から業績は高く評価され、敬愛されていた。

 世界的化学者への道のりは、少し変わっている。甲府盆地の農家に生まれ、勉強よりスポーツに熱中。山梨大学を出た後、都立高校夜間部の教師になった。油で汚れた手で懸命に勉強する生徒たちに刺激を受け、学び直しを決意、働きながら東京理科大大学院に進学した。その後、山梨大学助手、北里研究所研究員、アメリカ留学を経て、研究者として成長を遂げていく。何事にも全力投球で、ときに健康を害するほど、研究に没頭した。

 留学中、アメリカの製薬会社メルク社に北里研究所との共同研究を持ちかけ、産学連携の先鞭をつけるなど、研究者の枠におさまりきらない経営的な才覚も発揮し始めた。企業から資金提供を受けて研究を行い、微生物由来の有用な化学物質を発見したら、学術論文を発表すると同時に特許を出願する。その物質を使って企業が製品を開発、収益の一部をロイヤルティーとして受け取り、次の研究資金に回す。この大村方式は多くの成果を挙げた。資金提供を受けても「研究室は企業の下請けではない」という信念が、大村にはあった。

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