心揺さぶる評伝特集

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「三島由紀夫 悪の華へ」鈴木ふさ子著

 世に三島由紀夫についての評伝は数あるが、その多くは割腹自決という衝撃的な最期から遡行して彼の文学を見ていくものとなっている。しかし本書は、三島の幼い頃や青年期の生活史、オスカー・ワイルドから受けた文学体験を掘り起こし、その源泉に回帰するために不可避な運命としての自決という論を展開している点が新しい。

 著者は、三島の文学のベースにワイルドの「サロメ」が流れていることを発見し、武士道を重んずるマッチョ志向な三島像ではなく、むしろ耽美的で手弱女ぶりをあちこちに出現させる三島像を描いてみせる。没後45年、彼の深層心理にまで降りていき、その繊細な素顔を解き明かそうとした意欲作だ。(アーツアンドクラフツ 2200円+税)

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