心揺さぶる評伝特集

公開日: 更新日:

 変転する時代の風に吹かれながらも確固たる自分の世界を築けた人間と、そうでない人間の境目はどこにあるのか。丹念な取材を積み重ねて彼らの生涯に迫る評伝を読むと、日常に流されがちな私たちが見失った何かに気づかされることも多い。そこで今回は、それぞれの世界で一時代を担った4人の評伝をご紹介。この正月休みに世間の喧噪から離れて、芯を失わなかった男たちの人生を追体験してみてはいかが。

 日本を代表する山岳写真家であり、高山蝶やアシナガバチの生態や雪形の研究分野でも注目を集めた田淵行男。自然を愛するナチュラリストとしていかに彼がその才能を発揮し、戦後の経済発展の陰で容赦なく行われた自然破壊をどれほど危惧していたか、その生涯をたどるのが「安曇野のナチュラリスト 田淵行男」(山と溪谷社 2600円+税)だ。

 明治38年6月4日に鳥取で生まれた行男は、大山の南西の麓にある小さな山里で幼少時代を過ごした。「虫の日に生まれた」という自負を持つ行男は、虫や小鳥や周囲の木々など豊かな自然を遊び相手にする子だったが、4歳で母を亡くし、13歳で父を、14歳で継母を亡くすという悲しい体験をしている。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    米倉涼子“自宅ガサ入れ”報道の波紋と今後…直後にヨーロッパに渡航、帰国後はイベントを次々キャンセル

  2. 2

    「えげつないことも平気で…」“悪の帝国”ドジャースの驚愕すべき強さの秘密

  3. 3

    彬子さま三笠宮家“新当主”で…麻生太郎氏が気を揉む実妹・信子さま「母娘の断絶」と「女性宮家問題」

  4. 4

    アッと驚く自公「連立解消」…突っぱねた高市自民も離脱する斉藤公明も勝算なしの結末

  5. 5

    ヤクルト池山新監督の「意外な評判」 二軍を率いて最下位、その手腕を不安視する声が少なくないが…

  1. 6

    新型コロナワクチン接種後の健康被害の真実を探るドキュメンタリー映画「ヒポクラテスの盲点」を製作した大西隼監督に聞いた

  2. 7

    違法薬物で逮捕された元NHKアナ塚本堅一さんは、依存症予防教育アドバイザーとして再出発していた

  3. 8

    大麻所持の清水尋也、保釈後も広がる波紋…水面下で進む"芋づる式逮捕"に芸能界は戦々恐々

  4. 9

    “行間”を深読みできない人が急増中…「無言の帰宅」の意味、なぜ分からないのか

  5. 10

    万博協会も大阪府も元請けも「詐欺師」…パビリオン工事費未払い被害者が実名告発