「フェイリング・ファスト」ニコラス・カールソン著、長谷川圭訳

公開日: 更新日:

 青い目をしたブロンドの女性コンピューター・サイエンティストが、低迷していたヤフーにCEOとして乗り込んできた。彼女はスーパーヒロインか、それとも?

 マリッサ・メイヤーは1975年、ウィスコンシン州生まれ。スタンフォード大学大学院で人工知能を研究し、卒業後グーグルに入社した。優秀な人々に囲まれて生きることを望んでいたからだ。聡明で、抜群の集中力を持つ彼女は、猛烈なハードワークで検索エンジンの進化に取り組み、短期間で社内の重要人物にのし上がっていく。メディアに取り上げられて有名になり、イケメン銀行マンと結婚もした。

 メイヤーの前進は止まらない。検索の仕事をはずされ、心外な降格に遭うと、グーグルには自分の進むべき道は残されていないと判断、ヤフーへの転身を図った。社員の大歓迎を受けてヤフーのCEOに就任したとき、彼女は妊娠7カ月。それでも、グーグルでの経験をベースに、精力的に改革を推し進めた。最重要課題はPCからモバイルへの方向転換。加えて透明性の確保、社内コミュニケーション改革、職場の環境改善、仕事のスピードアップ……。成果はみるみる表れた。

 だが、ヤフーとの蜜月は1年で終わりを告げ、社員の間にメイヤーに対する不満がたまっていく。冷たい、会議に遅れる、頑固で人の助言に耳を貸さない、幹部人選の才がない。何より、業績が芳しくない。メイヤーは苦難の道のりの途上にある。

 このスーパーキャリアウーマンのビジネス戦記は、ネット業界の内幕を暴く業界戦国史にもなっている。下克上は当たり前。おごれる者は久しからず。峻烈な戦いがリアルタイムで進行中だ。(KADOKAWA 1800円+税)




最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    カーリング女子フォルティウス快進撃の裏にロコ・ソラーレからの恩恵 ミラノ五輪世界最終予選5連勝

  2. 2

    南原清隆「ヒルナンデス」終了報道で心配される“失業危機”…内村光良との不仲説の真相は?

  3. 3

    契約最終年の阿部巨人に大重圧…至上命令のV奪回は「ミスターのために」、松井秀喜監督誕生が既成事実化

  4. 4

    「対外試合禁止期間」に見直しの声があっても、私は気に入っているんです

  5. 5

    高市政権「調整役」不在でお手上げ状態…国会会期末迫るも法案審議グダグダの異例展開

  1. 6

    円満か?反旗か? 巨人オコエ電撃退団の舞台裏

  2. 7

    不慮の事故で四肢が完全麻痺…BARBEE BOYSのKONTAが日刊ゲンダイに語っていた歌、家族、うつ病との闘病

  3. 8

    箱根駅伝3連覇へ私が「手応え十分」と言える理由…青学大駅伝部の走りに期待して下さい!

  4. 9

    「日中戦争」5割弱が賛成 共同通信世論調査に心底、仰天…タガが外れた国の命運

  5. 10

    近藤真彦「合宿所」の思い出&武勇伝披露がブーメラン! 性加害の巣窟だったのに…「いつか話す」もスルー