「戦争まで」加藤陽子著

公開日: 更新日:

 ベストセラーとなった「それでも、日本人は『戦争』を選んだ」の著者が、中高生に向けた授業の中で日本が戦争へと至った分岐点を読み解いていく日本近現代史の解説本。残されている数多くの史料や演説や統計資料などの見方を具体的に示しつつ、生徒たちの素朴な疑問に答えながら、日本がなぜ戦争への道を進んだのかという要因を明らかにしていく。

 本書では、特に満州事変におけるリットン報告書、日独伊三国軍事同盟での外交と国内の合意形成の過程、日米交渉における日米それぞれの思惑という3つを詳細に読んでいくのだが、そこに共通しているのは、いわゆる人気のある「通説」の検証だ。

 まず史料を丹念に読み、当時の日本の状況や海外諸国の事情を確認していくことで通説の裏に隠された事柄が見えてくる。昨年8月15日の全国戦没者追悼式における今上天皇の式辞、戦後70年を総括した安倍総理による内閣総理大臣談話など、記憶に新しい出来事も俎上にあげながら、過去と地続きの今の日本を考えることができる。

 近現代史をユーモアたっぷりの講義形式でわかりやすく学べる点もうれしい。(朝日出版社 1700円+税)


【連載】ベストセラー早読み

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    嵐ラストで「500億円ボロ儲け」でも“びた一文払われない”性被害者も…藤島ジュリー景子氏に問われる責任問題

  2. 2

    トリプル安で評価一変「サナエノリスク」に…為替への口先介入も一時しのぎ、“日本売り”は止まらない

  3. 3

    27年度前期朝ドラ「巡るスワン」ヒロインに森田望智 役作りで腋毛を生やし…体当たりの演技の評判と恋の噂

  4. 4

    今田美桜に襲い掛かった「3億円トラブル」報道で“CM女王”消滅…女優業へのダメージも避けられず

  5. 5

    安青錦の大関昇進めぐり「賛成」「反対」真っ二つ…苦手の横綱・大の里に善戦したと思いきや

  1. 6

    元TOKIO松岡昌宏に「STARTO退所→独立」報道も…1人残されたリーダー城島茂の人望が話題になるワケ

  2. 7

    今田美桜が"あんぱん疲れ"で目黒蓮の二の舞いになる懸念…超過酷な朝ドラヒロインのスケジュール

  3. 8

    織田裕二「踊る大捜査線」復活までのドタバタ劇…ようやく製作発表も、公開が2年後になったワケ

  4. 9

    「嵐」が2019年以来の大トリか…放送開始100年「NHK紅白歌合戦」めぐる“ライバルグループ”の名前

  5. 10

    実は失言じゃなかった? 「おじいさんにトドメ」発言のtimelesz篠塚大輝に集まった意外な賛辞