「みかづき」森絵都著

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 60年安保の翌年。千葉県習志野市の小学校で用務員を務める22歳の大島吾郎は、勉強がわからないという子供たちに勉強を教え始め、用務員室は「大島教室」と呼ばれるようになっていた。そんな吾郎に、教え子の蕗子の母親・千明が、一緒に塾を始めないかと持ちかけてきた。千明は戦後の民主主義教育に期待を寄せていたが、講和条約締結後、再び文部省の手によって教育が国家の手に握られようとしていることに強い危機感を持っていたのだ。

 千明の激しい情熱に引きずられるように、シングルマザーの千明と結婚し、共に学習塾を立ち上げる。折よくベビーブームと高度成長の波に乗って、塾は順調に発展していくが、攻めの姿勢を緩めず拡張路線を取る千明と生徒とのつながりを優先する吾郎との違いは、やがて大きな亀裂を迎えるが、2人の教育に懸ける思いは、子供から孫へと3代にわたって受け継がれていく……。

 太陽としての学校教育と月のような存在の塾との60年余にわたる相克の歴史をたどりながら、理想の教育とは何かを鋭く問う、力作長編。(集英社 1850円+税)

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