日刊ゲンダイDIGITAL

  • facebook  
  • twitter  
  • Facebook Messenger

有名な本探しのエピソードにひねり

「おさがしの本は」門井慶喜著/光文社文庫 680円+税

【話題】今では図書館の資料検索などもインターネットで済ませることが多くなったが、検索しようにも記憶が曖昧で探しようがなく、人と話しているうちに目当ての本に思い当たることもしばしばだ。そんな時は、やはり対面のレファレンスサービスはありがたい。

 本書は図書館のレファレンスカウンターを舞台に繰り広げられる、ちょっとミステリアスな事件を描いた連作短編集。
【あらすじ】和久山隆彦はN市立図書館に入職して7年。ここ3年は資料調査課に配属されて日々、レファレンスカウンターに座っている。現れたのは20歳前後の女の子で、「シンリン太郎について調べたいんですけど」と言ってきた。和久山は内心「またか」と思う。それは森林太郎、つまり文豪・森鴎外の本名で、年に一度は必ず舞い込む質問だ。

 ところが、彼女が書き写したリポートの課題には「林森太郎『日本文学史』を読み、考えたところを記せ」とある。きっと彼女が写し間違えたのだろうと、鴎外の似たようなタイトルの文章を探してやるのだが……。

 その他、赤い富士山が出てくる本、早川図書とか何とかのシリーズ本、陰茎で障子を突き破るシーンが出てくる小説等々。

 ちょっとした本好きであれば、「ああ、あれか」と思いつくだろう。ところがどっこい、そうは簡単にいかない。そこにどのようなひねりを利かせるかが、著者の腕の見せどころ。

【読みどころ】こうした本探しのエピソードと並行して、市の財政難により図書館を廃止しようと乗り込んだ新館長と、それを阻止して存続を図ろうとする和久山ら図書館員たちとの対決も語られていく。最後に和久山が語る図書館存続の意義は本好きの心を打つ。〈石〉

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

最新のBOOKS記事