図書館はいつも楽しい

公開日: 更新日:

「晴れた日は図書館へいこう」緑川聖司著 ポプラ文庫ピュアフル 580円+税

【話題】子どもの頃、天気のいい日に家で本を読んでいると、「こんな天気に、家になんかいないで外で遊びなさい」と親に叱られたことのある人も多いだろう。

 でも、うららかな日差しを浴びながら自分の好きな本を読むのは、なかなかに至福の瞬間ではある。本書の主人公は、そんな本好きの小学5年生の女の子だ。

【あらすじ】幼い頃に両親が離婚し、今は母と2人暮らしの茅野しおりは、本を読むのが大好きで、暇さえあれば近所にある市立図書館へ行って新しい本を借りて読むのが、何よりの楽しみ。図書館にはいとこの美弥子さんが司書として働いており、本のプロである彼女から読書について手ほどきを受けるのもうれしくて仕方がない。

 ある日、しおりが図書館で「魔女たちの静かな夜」という本を借りようとしていたとき、小さな女の子がやってきて「あ、わたしの本」と声を上げた。そう言われて、カナちゃんというその子に本を渡したしおりだが、「わたしの本って?」と不思議に思っていた。その謎を見事に解いてくれたのは美弥子さん。そしてそこには母親の温かい愛情があったのだ。

 またあるときは、児童書のコーナーから本が何冊も行方不明になっていた。調べてみると、なくなった本には共通の特徴があり、ある意外な理由が……。

【読みどころ】最終話は、幼い頃に別れたきりの父親としおりが図書館で再会する心温まるエピソード。そして番外編の「雨の日も図書館へいこう」は、本編でホームズ役としてしおりを助ける美弥子さんの小学生時代の、ある雨の日に起きた図書館の思い出。要するに、晴れた日も、雨の日も、いつでも図書館は楽しいんだよ、という作者の熱いメッセージが伝わってくる。〈石〉

【連載】文庫で読む 図書館をめぐる物語

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    侍ジャパンに日韓戦への出場辞退相次ぐワケ…「今後さらに増える」の見立てまで

  2. 2

    大谷翔平は米国人から嫌われている?メディアに続き選手間投票でもMVP落選の謎解き

  3. 3

    阪神の日本シリーズ敗退は藤川監督の“自滅”だった…自軍にまで「情報隠し」で選手負担激増の本末転倒

  4. 4

    “新コメ大臣”鈴木憲和農相が早くも大炎上! 37万トン減産決定で生産者と消費者の分断加速

  5. 5

    侍J井端監督が仕掛ける巨人・岡本和真への「恩の取り立て」…メジャー組でも“代表選出”の深謀遠慮

  1. 6

    巨人が助っ人左腕ケイ争奪戦に殴り込み…メジャー含む“四つ巴”のマネーゲーム勃発へ

  2. 7

    藤川阪神で加速する恐怖政治…2コーチの退団、異動は“ケンカ別れ”だった

  3. 8

    支持率8割超でも選挙に勝てない「高市バブル」の落とし穴…保守王国の首長選で大差ボロ負けの異常事態

  4. 9

    大谷翔平の来春WBC「二刀流封印」に現実味…ドジャース首脳陣が危機感募らすワールドシリーズの深刻疲労

  5. 10

    和田アキ子が明かした「57年間給料制」の内訳と若手タレントたちが仰天した“特別待遇”列伝