「カミカゼの邦」神野オキナ著
魚釣島に入った日本人を中国人民解放軍が拘束したことを契機に、戦争へと突入した中国と日本。主人公の渋谷賢雄は、戦場と化した沖縄で琉球義勇軍に参加し、生き残りをかけた戦いを始めた。
仲間となったのは、狙撃手の淀川裕樹やヤクザ者の諸見座晄三郎、殺人に快楽を覚える嘉和ユウスケのほか、たまたま修学旅行で沖縄に来ていて戦闘に巻き込まれた高校教師の政長恭子と生徒の結城真琴ら。
人を野獣へと変える血みどろの戦いをくぐり抜けた後、苛立ちを抱えたまま東京に降り立った渋谷のもとに、かつての仲間たちが集まり始めた。ここで新たな戦いが始まるのだが……。
著者は、2000年にファミ通文庫から刊行された「闇色の戦天使(ダークネス・ウォーエンジェル)」でデビューして以来、主にライトノベルの分野で活躍してきた沖縄生まれの作家。本書では、サバイバルの地と化した沖縄と戦後の東京を、冷酷かつエロチックな筆致で真正面から描いている。
(徳間書店 1900円+税)