『VIVANT』監督もパワハラ認定…「責任感の強い上司」ほど暴走する“意外な理由”
「仕事で成果を上げている上司なら、多少きつい言い方をしても仕方がない」──そう考える人もいるかもしれません。たしかに結果が出ている間は、その指導法に疑問を投げかける声も上がりにくいものです。
しかし、誰も「それは違う」と言えなくなった職場では、何が起きるのか。TBSは、ドラマ『VIVANT』の福澤克雄監督について、撮影期間中の言動がパワーハラスメントに該当すると認め、人事上の措置と研修を行ったと明らかにしました。
また、金銭不祥事が発覚したプルデンシャル生命は、「営業社員への過度な尊重」や「高業績者が称賛される組織風土」を課題に挙げています。当然、二つの事案は同列には扱えません。ただ、実績のある人物に周囲が意見できなくなる点には、共通する危うさがあります。
なぜ、責任感が強く、優秀なリーダーほど暴走してしまうのか。そこには、性格だけでは説明できない脳と自律神経の働きがあるのです。その構造を解説します。(板生研一=MBA/医学博士)
◇ ◇ ◇
恐怖で部下を動かすのは、もともと乱暴な人だけではありません。私がむしろ注意すべきだと考えているのは、仕事熱心で責任感が強く、成功を重ねてきた上司です。
自分の判断で何度も難局を切り抜けてきた人ほど、「今回も自分が正しい」と考えやすくなります。部下からの進言も、改善のための提案ではなく、覚悟のなさや反抗に見えてしまう。失敗できない立場に置かれれば、その傾向はいっそう強まります。
権力と他者理解の関係を調べた研究でも、強い権力を意識した人ほど、相手の視点に立ちにくく、他人の感情を読み取る精度が下がる傾向が示されました(※1)。
もちろん、肩書を得ただけで人が急に変わるわけではありません。ただ、周囲が先回りして従う環境では、自分の言葉が以前より重くなったことに気づきにくくなります。
本人は「組織を守っている」「部下を育てている」と信じていますが、そこに盲点があります。責任感が強い人ほど、自分の怒りを正当な指導だと思い込み、暴走していることに気づけなくなるのです。
■「統率の取れた職場」が一番キケンだった
上司が声を荒らげれば、部下はすぐに動きます。返事も早くなり、指示通りに仕事が進むため、一見すると統率が取れているように見えるでしょう。
ただ、恐怖を感じた部下が最優先するのは、よい仕事ではなく「怒られないこと」です。上司が喜びそうな答えを探し、失敗は小さく見せ、不都合な報告は後回しにするようになります。
会議で反対意見が出なくなったとしても、チームがまとまったとは限りません。誰も口を開けなくなっただけかもしれないのです。
心理的安全性に関する研究では、意見や失敗を共有しても不利益を受けないと感じられるチームほど、質問や情報共有など、学習につながる行動が起こりやすいと報告されています(※2)。
恐怖は、短期的には人を動かします。しかし同時に、自分で考える力や、悪い情報を報告する勇気まで奪います。イエスマンばかりがいる職場ほど、経営者や管理職は「裸の王様」になりやすいのです。
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